雛は阿古丸から聞いだ真実゙を打ち明けた。ゴーレムは本物の肉体を求め、叶わないがゆえに満たされない欲望のままに人を喰らう。
それが今回の場合、三人官女の怨みから、10歳前後の少年達だったのだ。

ただ、それだけには終わらない。


「………ゴーレム魂の魂は………媒介になった死人の記憶を利用し…………自らをその人物と思い込むという…………」


「つまり、アイツは三人官女の記憶のみを持った泥の化け物?」


「……………」


頷かない。怖いのだ。あれが姉ではなく、姉の姿をしただけの化け物だなんて。


「……………しゃらァッ!」



突如、コウは飛び蹴りをサンドバッグにした。



「何を…………」


「今の話を聴いて、尚更イヤリング中宮を斃さないといけなくなった。だから特訓だよ」


「また、妾から姉様を奪うのか?」


「アイツはゴーレム!。ただの泥人形だって、君自身が言ってたじゃないか」


「!!?」


そう言われると、雛は涙を流した。


「…………わかってる…………妾にも…………。だが、もう姉様を失いたくないのだ…………」


泣き崩れる雛。健一は慰めたいと思いながらも、かける言葉を見つけることが出来ないでいる。
それを見たコウは汗を拭うと、口を開いた。


「どうして君は、僕達のところへ来て、その事を教えてくれたの?」



「…………それは………」

雛自身、ここに来ることば想定゙していなかった。


「妾は見てしまったのだ…………」


ここに来る前、というよりは昨日の戦いの後から、イヤリング中宮により喰われた犠牲者達の家を見てきていた。
既にダイレンジャーとゴーマが世間に認知されており、犠牲となった少年達の親には事実が伝えられていた。
その時、どの親も泣き崩れていた。行方不明である事は苦しさと同時に、゙生きているかもしれない゙という希望を与える。
それが空虚な希望であるとわかっていても、立ち上がる力になる。
しかし、そうではないと、死んでいるとしたらどうか。












―――――絶望―――――













希望は簡単に打ち砕かれてしまう。もう二度と会えないのだと。もう二度と抱き締められないのだと。
親は絶望し、渇れることのない涙を流し続ける。



「あの姿は………まるで………」


「姉を失った君みたい、か………」


健一の言葉に頷く。コウは苦い顔をしながら、雛を見る。


「なら尚更斃すしかない。そんな涙を…………もう流させない…………」


「お前……………」



「僕には見えたんだ。喰われた子の魂が…………今でも、イヤリング中宮に捕らえられてる」



魂ごと喰われたのだというコウ。雛にもそんな気がしていた。
今まではゴミ同然に思っていた人間に対し、こんな風に考えるとは不思議なものだ。


「あと………ありがとう。その事、教えてくれて」



謎だ。コイツはなぜ自分に礼を言うのだろう。


「…………妾はお前達の敵だ…………」


ダイなのに。敵対する自分に。



「だけど…………」



そして、なぜ………


「頼みたいことがある」


なぜ、敵であるコウに自分は…………。


「姉様を…………救ってくれ」