家に帰った由貴は、すぐに風呂に入った。シャワーをかけ、下をうつむく。
なぜか、自分の髪・乳房・肌、そしてシャワー口から流れる水滴のすべてがスローに見える。


「……………」



どう思い返しても、コウと町子のキスが頭をよぎっていく。


「………………なんで…………あたし………こんなに嫉妬してるの…………」







風呂から出ても、すぐに部屋に入ってしまい、出てこないのだ。


「由貴、どうしたんだろう?」


父がそわそわしている。
そんな状態を見かねた祖母は、由貴の部屋へと向かった。


「由貴や」


「………おばあちゃん………」


「悩みがあるのかい?」


「うん…………」


眼をそらす。その事から、あまり人には言いたくない事だと、祖母は判断した。


「なら悩みなさい。うんと悩んで、自分で答えを出しなさい」


ありふれた励ましなのに、どこか初めて聞いたみたいだ。


「おばあちゃん、厳しいね」


でも、どこかホッとしている。そう、自分の中で解決しなければならないのだ。













同じ頃、町子も部屋の中で、思春期的な行動を終えたところだった。


「……………ハァ…………ハァ………」


自分の指に絡んだ液体を見ると、自己嫌悪してしまう。どうしてこんなことをしてるのだろう?
友を傷つけて、愛する者を悩ませる。こんなことを望んでいたわけではないというのに。


「コウ………好きなのに……………」



ティッシュで拭き取り、洗面所で石鹸を使って洗い流す。
ゴシゴシ、ゴシゴシ……………3分間は洗った。汚い自分を洗い流すように。
恐らく、由貴は自慰など知りもしないだろう。
自分は、この歳にして頼ってしまっている。


「こんなに…………好きなのに…………」


情けない。自分は撒き散らすかのようにしてしまう。やり場のない激情が、町子を支配しており、解決法を知りもしない。
今はただ、この感情をぶつける場所として、自分を選ぶことしか出来ないのだ。

















―――――ゴーマ宮―――――



撤退した雛とイヤリング中宮。


「腹が減ったのう………」

「…………はい……」


ダメージは不思議と回復している。あれだけの攻撃を決められているというのに。
その代わり、ずっと空腹を訴えている。食べるのは、決まって肉のみ。


「……はぐっ、うむう………もっと持ってくるのじゃ」


「あの………姉様。もう止めた方が………」