゙シュッ!゙









「ぶっ!?」


突然、髪が動きだして尚司の口を塞いだ。更に、部屋中に張り巡らされた髪も尚司の躰を縛り上げてしまう。


「むぅぅぅぅ!」


そのまま布団に倒れこむ。手足を動かそうとするが、余りに強い力で縛られているために身動きが取れない。


「フフフ…………あの子はどこ…………」


「!?」


聴いたことがない声。尚司が横を見ると、全裸の美女が立っていた。


「お前はあの子ではないのか……………」


そう言うと、美女は異形の怪物へと姿を変える。その美女こそ、甦ったイヤリング官女であった。
姿はかつてのイヤリング官女と差違は少ないが、特徴として手には指輪をしており、首には巨大なネックレスを巻いている。
また、耳も大きくなり、背中は指輪官女のように大きい。
加えて、耳の右は指輪官女・左はネックレス官女の顔の形をしている。



「イヤリング中宮………………」



゙シュルシュル゙












「ヴッ!」


髪が服の中にまで侵入してきた。髪質もいつの間にか毛布のようなモフモフしたものとなっていた。
尚司は脇や股間にも侵入してきた髪に妙な感情を抱きつつも、不快感と恐怖に支配されていた。


「お前は妾の血肉となるがよい」


「!!?」


尚司は自分の力が抜けていくのを感じた。その際に、髪を通して黄色い光がイヤリング中宮へと向かっていくのがわかった。
髪を通し、精気が吸われているのである。


「ばずげべ…………………ぼがあ゛ざぁぁん゛ッッ!!」


どんどん精気を吸われ、意識が消えていく。やがて、髪が尚司の躰を全て包み込んでしまう。
黄色い光が途絶え、髪を戻すイヤリング中宮。
















゙ガラッ!!゙






「尚司、どうかしたの!?」


父と母が急いで2階に上がってきた。隣の部屋で寝ていた兄も見に来る。
部屋には何の異常もない。しかし、尚司の姿は何処にも無かった。
ただ、布団の上には、尚司が着ていたパジャマとパンツだけが残っていたのであった。



















翌日、11月19日の土曜日。半日だけ登校するため、コウ達は学校にいた。



「何か、町子ちゃん遅いね」


由貴が時計を気にしている。普段ならもう来ている時間なのに、来ていない。

















゙ガララッ!゙









「はぁ…………はぁ………間に合った…………」


「あ、おは………………え?」


由貴は思わず眼を疑った。というより、クラスの全員が視線を奪われた。


「どうしたの…………その髪型…………」


「い、イメチェン…………」


何と、ウェーブのかかったツーサイドアップになっていた。昨日までポニーテールだったのを、一気に変えてきたのであった。
町子はチラッとコウを見た。コウも驚いている。なぜなら、今の町子は超絶な美少女なのだ。