恋の荒騒ぎ②

給食の時間になった。相変わらず、コウと健一は早食い競争をしている。


「…………しゃァッ！俺の勝ちだ！！」


「く…………あと、あと一口の差で………」


健一の勝利らしい。町子は隣にいる梨沙に肩を叩かれ、振り向く。


「ねえ、町子ちゃん」


「ん？」


「健一君って彼女いるのかな？」


「！！？」


驚いた。そんな描写が今まであったろうか？


「いやぁ、何か健一君最近格好いいって思って…………ほら、ゴーマが来た時に凄い勇敢だったし」


「……………う～ん…………」


健一が彼女を作るということはない。なぜなら、健一は……………。











「ねえ、由貴ちゃん、見てた！？」












健一は由貴が好きだ。自分達が同じクラスになるよりも前から。
しかし、由貴はコウが好きなのだ。だから、幼馴染みの雅之も振った。
今、ここで聞いてきた梨沙は好意があるのではなく、興味がある程度だろう。


「あんまり急いで食べたら体に良くないよ」


『え！？』


一番タチが悪いのは、コウも由貴が好きだということだ。全員が親友で、ダイレンジャーキッズである多角関係はドロドロしすぎている。


「コウ君も健一君も、あんまり早食いしちゃダメだよ」


『…………はーい………』


由貴は人気がある。可愛いし、優しいし、胸もある。確かに、好意を寄せる男子が多いのも頷ける。
同様に、コウも行動力があり、少々顔立ちも良い。お互いに好きになるのは、悔しいくらいにわかる。
何より、今までの戦いの中で２人の関係は育まれたようなものだ。
一番は間違いなく、ﾞジェットマンの世界ﾞで由貴が魔神に殺された時だ。
あの時のコウは泣き叫び、バキという怪物に目覚めた。
禁じられているﾞ反魂術ﾞを用いて、生き返った由貴はコウと同じように気を感じたり、生身のまま力を使えるようになった。
まるで、あの２人はお互いに近づいているかのように思える。


(コウは…………)


前回の戦いでわかるほど、コウは人であろうとしている。
逆に言えば、コウは自分が普通の人間でないことを自覚している。
自分を助けた時に解放した妖力は、典韋を驚かせている。バキになる寸前とはいえるくらいの力を使ってしまった程、その力は強大だ。
それも由貴が起点になっているような気がしてならない。


(本当、どうしてあたしじゃないんだろ…………)















その後も町子はどこか浮わついたまま授業を受けていた。
掃除の時間になっても、そのままであった。階段を掃きながら考えてしまう。


「どうしたものかなぁ」


段を降りて掃いてく。すると、足を踏み外してしまう。


「！？」


突然で、体が反応できない。このままでは、落ちてしまう。