11月18日、金曜日。朝起きて、カレンダーはその日を指していた。
町子は顔を洗うと、着替え始める。シャツを取り替えて鏡の前に立つ。


「小さ………」


胸が育っていない。クラスのみんなはもちろん、由貴は4年生の中では1、2位を争う膨らみ具合までなっているというのに。


「おかしいなぁ………豆乳いっぱい飲んでるのに………」


豆腐を作る際の豆乳を飲んでるというのに、なぜ膨らまないのか。
母は普通にあるので遺伝ではない。


「そ、そうよ………あたしはまだ準備段階………きっとそうだって………」


そう言い聞かせながら、寒いながらもスカートを履く。長い髪を一本に束ね、後ろで結んだポニーテールが揺れている。
朝食を済ますと、ローズ色のランドセルを背負って家を出た。


「はぁ…………」


秋空の下で登校中にため息をついてしまう町子。何でこうも、自分は育ちが遅いのだろうか。
躰も細い方だし、胸が気になるくらい小さい。恐らく小学4年生としては平均なのだろうが、周りが育ちすぎているせいで相対すると辛い部分がある。


「……………んもうッ!」

堪らず声を出してしまう。


「どうしたの?」


「!!?」


声をかけられ、振り向く町子。そこにはコウがいた。


「おはよう町子ちゃん。今の声は?」


「お、おは…………って、あんた、聴いてたの!?」

「そりゃあ、あんな声出したら…………」


カアァァ、と頬が染まっていく。よりによって、コウに聞かれるなんて。


「今日は早いじゃない………」


何とか話をすり替えようとする。


「いつもこんなんじゃない?」


「あんた、最初は遅刻とかばっかだったじゃん」


「今は違うよ」


凛々しい。コウは変わった。いたずら好きな腕白小僧だったが、あれからの変化は凄まじい。
ダイレンジャーキッズを結成し、ジェットマンの世界まで行き、度重なる戦いを経て、リーダーシップと落ち着きを得た。
そのくせ、人を守ろうという自覚が強くなり、男らしい上にヒーロー、という風格を持った。
学校のみんなの心を動かしたのも、コウが諦めなかったこともある。


「何で、コウはそんなに格好よくなっちゃったの………」


「え?」


「!?。な、何でもないんだからね!。さ、遅刻しちゃうし、早く行くわよ!」

「う、うん…………」


まずい。今、自分の気持ちに気づかれてしまったら…………。


















理科の授業。花の交配について、先生が述べている。
町子がチラッとコウを見ると、ノートをとるような姿勢で寝そうになっている。


(ちょっと…………ん?)


モゾモゾとコウの胸で動くものがあった。白虎真剣だろう。
首を出し、コウの手首に噛みついた。


「ガブッ!」
















「…………変身!?」














コウは驚き、思わず立ち上がってしまった。クラスの視線を集め、先生には怒られるという散々であった。