「コウ…………」


町子は思わず立ち上がった。折った腕を庇いながらも、疲れた足で歩いていく。


「コウ君…………」


同じように、由貴も血を流しながらも歩いていく。
キッズ達は転身が解かれながらも、力を振り絞ってコウの下へと集まった。


「みん、な…………無事?」


「んなわけねえだろ………お前と同じで、血を出しまくってるよ」


健一が冗談混じりに言うが、キッズ達は満身創痍だった。


「でも、アイツは死んだよね………」


正夫に言われ、全員が典韋を見た。動かない。どうやら、事切れているようだ。


「やった…………あたし達、勝っ……………」

















゙ドヴッ!!゙














『!!?』


衝撃が走った。典韋は起き上がり、鬼のような形相で睨んでいた。


「敗けられないのだ……………」


『………………』


「ゴーマを……………一族を守らんがため、敗けられないのだ…………」



物凄い執念だ。



「僕らも……………人間を守るために勝たなくちゃいけないんだ……………」



どちらも譲れない。お互いに守りたいものを、守ろうとしているだけなのだ。
そう、キッズ達は思いながら立ち上がる。


「…………同じでありながら、お前達が勝るか………」


真っ直ぐな眼。それを見た途端、典韋は自らの敗北を察した。
純粋に人を愛し、守ろうとする者。そのためならば、何度だって力を振り絞り、立ち上がっていく。
その姿を見て、自らが傷をつけられ、敗れた理由を理解してしまったのである。

「昔も、今も、お前達と人間の絆に敗れるか…………………」


断ち切ろうと、再び繋げていく。本物の絆というのを、思い知らされたようだ。


「……………小僧ども………敗けを認めよう……………。しかし………………気を付けるのだな…………やがて、お前達は…………血のために…………殺しあう…………」


コウを見つめながら言う。


「ゴーマよ…………我が使命……………果たさず逝くことを…………ゆる………………………」



バタリと、倒れる典韋。今度こそ、完全に絶命した。やがて、典韋は光の粒のようになり、空に舞い上がっていくのだった。


「……………強敵………だったな…………」



健一に言われ、頷くキッズ達。ただ静かに、暫くは動けなかった。
今回の戦いで、あまりにも多くの犠牲者を出してしまった。
子供達に死亡者はいないが、先生を喪った。そして………………。


「学校のみんな………どう思うかな?」


歓声の中、送り出してはくれたが…………。






















「よもや、典韋を斃すなんてね………」


阿古丸は若干の驚きがあった。典韋を斃す力があれば、大抵の怪人では勝てない。


「やはり、私が直接やらなければ……………??。どうした?雛」


「姉様を殺したのは、あの真ん中の小僧ですか?」


見つめているのは、コウであった。


「そうだ。アイツが三人官女を殺した張本人だ」


グッと袖を握る雛。その様子を阿古丸は黙って見ているのであった。