「自分で決めなきゃいけないってわかった…………………たぶん」


好きな男を選ぶのは、常に自分の心でければならない。母はそう言いたかったのだろう。


「だから、あたしは………………」


「由貴!!」


駆け寄ってくるのは雅之だった。コウはバツが悪い、と言わんばかりの顔をしている。


「なあ、由貴………もしかして………」


「雅之君…………その、ごめんなさい!!」


『!!!??』


面喰らった顔をするコウと雅之。まさか、こんな所で返答するとは……………。

「な、何で………」


雅之は理由を聞く。由貴はしっかりした眼で、雅之を見つめる。


「雅之君は友達。でも、それ以上の気持ちを持ててないの」


「……………他に好きな人がいるのか?」


「……………うん」


ハッキリと答える。雅之は、それがコウなのだと直感する。
当のコウは、聞いていながらも自分だとは気づいていない。


「どうしても、駄目なのか?。俺、ずっと…………」


由貴は首を横に振る。申し訳ない、という想いはない。むしろハッキリしなければならないのだ。


「でも、これからも仲良く…………」


「う………嫌だ!ずっと好きだったのに、諦められるか!」


雅之は走っていってしまう。


「ちょ、雅之、これから学校だぞ!」


「うるせえッ!」


すべてが嫌になっていた。今まで由貴に抱いていた恋心、その年月。それが否定された。
幼い心には、世界から拒絶されたかのような気持ちを抱いてしまう。
コウと由貴もおいかけるも、雅之はなりふり構わずに走っていく。













゙キキィィッ!!゙













「今のは?」


「車………まさか………」

2人は雅之が車に轢かれてしまったかと思う。道を曲がると、案の定車が止まっていた。


「雅之君は!?」


「…………近くに気を感じる………でも、いない?」

2人は辺りを見渡す。由貴はつい車を触る。すると、生っぽい感触がして下を向く。


「!!?」


思わず後退りしてしまう。その反応に気づき、コウも車を見る。
そして、同じように後退りしていき、その現状を認識した。


「雅之………なのか………」


コウ達が見ているのもの、それは見覚えのある少年が車に埋め込まれていた。
雅之だ。意識はないようで、白眼を剥いている。
外観からだと、車の表面が雅之の躰と完全にくっついている、という印象であった。


「ひでえ………誰が…………いや、ゴーマか………」


こう出来るのは、ゴーマ以外にはいない。恐らく雅之が狙われたのではなく、無作為にしているのだろう。


「早く斃さないと………」

「うん。学校は諦めるか…………」


2人は敢えて他のキッズには連絡せず、妖力の発している場所へと向かった。