「でも、見られるなんて…………」


コウと町子(健一もだが)が告白の現場を見ていた。何となく、ガッカリしてしまった部分がある。
どう思うかについて尋ねると、


゙由貴ちゃんはどうなの?゙



と、質問で反されてしまった。本当は、コウからの言葉を期待していたのである。
または、自分が告白すれば良かったのかもしれない。そうすれば、ハッキリするのだ。
しかし、そんな勇気はない。関係が崩れるのが一番危険なのだ。それでも、この答えに決着をしなければならない。


(雅之君に返事しないといけないのに…………)























風呂から出て、髪をとかす由貴。すると、トントンとドアを叩いて、母が入ってくる。


「お母さん………」


「たまには、前みたいにママがとかしてあげるわ」


クシを持ち、由貴の髪を触る。色や質感は母譲りで、心地は悪くない。


「ねえ、お母さん……………」


「ん?」


「例えば、例えばね。自分が好きな人とは別に、自分を好きな人は告白してくれたら、どうする?」


「へぇ、真司の言うことも正しかったわ。本当、由貴もそんな年頃なのね」


「……………」


本当は親に相談するのは恥ずかしいし、名前を出そうとは思わない。


「相手はコウ君、かな?」


「え…………何でわかっ………………あ…………」


わかりやすい。そう言われてる気がする。


「私は人生の先輩よ?」



「………もうっ!」


「それで、由貴はコウ君が好きなのに、別の男の子にも告白されたのね?」


「……………うん………」

自分の娘ながら、モテるのは嬉しい気もする。


「答えは決まってるんじゃないのかな」


「何で、そう思うの?」


「言ったでしょ?ママは先輩よ」















翌日、登校している由貴の前に健一が歩いていた。走って追いついく。


「おはよう」


「おはよう」


いつもなら、やつぎばやに会話が始まるが、そのまま並んで歩いていく。
気まずいのではなく、切り出しが計れないのだ。


「……………あのさ、由貴ちゃん………」


静寂を破ったのは、コウだった。


「う、うん………」


「昨日の…………その…………雅之からの………」


「決めたよ」


「!!?」


つい、立ち止まってしまった。由貴が答えを出し、それが怖い。


「自分の気持ちに正直でいようって思うの」


「つまり………由貴ちゃんはどう……………」


2人の眼、それは互いを見ている。