サッカーを終えたコウ達は喉を潤そうと水のみ場へ行き、水を飲む。


「………ふぅ………」


「そういや、雅之が来ないなんて珍しいよな」


健一から言われ、コウは確かにと思う。いつもなら参加するし、塾に行ってるわけでもない(成績はコウや健一より上)。


「修二の話じゃ、用があるってことみたいだけど………」


2人は帰ろうとすると、町子が昇降口から出てくるのを視認した。
もゔセブン゙に行ってるかと思いきや、学校にいるとは。


「町子ちゃーん!!」


「…………コウ、健一…………」


「もゔセブン゙に行ってたんじゃないの?」


「あ…………うん…………」


何やら恥ずかしげにも見える。コウも健一も、それが何なのかはわかっていない。


「由貴ちゃんは?確か一緒じゃなかった?」


「あ、あー……………うん。由貴ちゃんは、雅之と…………」


『え!!?』



用があると帰ったはずではないだろうか。その先を健一は考えた。
男が女に話があると言えば…………。



「ヤバい……………雅之の奴、由貴ちゃんに…………」


「え?何がヤバいの?」


コウは健一が気づいたことが何なのかがわからなかった。


「お前なぁ…………」


「?」


呆れる健一を他所に、町子はコウの肩を押そうとした。


「さ、あたし達ばセブン゙に行こうよ」


「え?由貴ちゃんは?」


「いいの!2人の邪魔しないの!」


今、町子の中では嬉しさと罪悪感が共生していた。この多角関係に変化が訪れるかもしれないと、期待してしまっている。
逆に、コウにそれを知らせないことが卑怯な気もしていた。


「町子ちゃん………ちょ…………」


グイグイ押されていくコウ。そんな時、校舎裏の方へ向かう人を目撃した。


「あれは由貴ちゃんと雅之!?」


コウが気づくと、健一は真っ先に走り出した。同じように、コウも町子を振り切って向かう。
邪魔させてたまるか、と町子も追いかけていった。






















校舎裏にある一本の大樹。そこに由貴と雅之はいた。


「なぁ、覚えてるか?」


大樹に触り、雅之は回想する。


「1年生の時、かくれんぼしてて、俺がこの樹に頭ぶつけちまってさ。俺じゃなくて、お前が大泣きしてんのな」


「だって、あの時は雅之君がいっぱい血を流してたから………」


大事には至らなかったが、当時の由貴は痛々しいものを見るだけで泣いてしまう程だった。


「それで、話って何?」


やはり鈍感、と雅之は思った。というより、子供なのだ。


「コウと仲良いなって………」



「え………」