「ぬぅぅう………野球拳・゙ど根性バーニング!゙」



やる気で体温を爆発的に上昇させ、氷を溶かしてしまう。そして、煙が上がるバットでシシレンジャーの肘を叩いたのだった。




゙バキィィッ!゙





「あぁぁぁうっ…………」

思わず、狛犬斧を落としてしまう。それを好機と、シシレンジャーを叩いていく。



「どぉぉしたぁ?腕の痛みごときで、根性が足らんぞぉぉぉォォォッ!」




シシレンジャーのスーツから煙が上がる。叩かれた箇所からだったものが、手数が多すぎて出所がわからなくなるほどになっていた。


「ダァァァハハハハ!指導、指導!!」









゙パシッ!゙












「!?」


バットが止まる。シシレンジャーが受け止めたのである。しかも、痛んでる方の左腕で掴み取っていた。


「………こういうのが指導なのか………さっきの野球と言い、楽しいのはお前達だけじゃないか!!」


震えながら、強く握る。握っていた箇所からバットが凍っていき、急激な温度の低下でヒビが入っていった。


「何………」


「バット監督、直球勝負だァッ!」


シシレンジャーは気功弾を練り、右手に集中する。


「天幻星・゙ファントム気功弾!!゙」



投げ出される気功弾。バット監督は慌てて新しいバットを持ち、構える。
しかし、直前で気功弾は消滅してしまう。


「な、消える魔球だとぉぉぉ……」











゙ドォォォンッ!!!゙











「どわぁぁぁァァッ!」



腹部に何かが当たり、吹き飛ぶバット監督。この何かとは、消えた気功弾である。
天幻星・゙ファントム気功弾゙とは、気功弾の上に幻を乗せ、打者からは消えたように見える特殊な技だったのだ。
続いて、シシレンジャーは狛犬斧を持ち上げ、高くジャンプをした。


「霜氷星・゙氷山からたけ割り!!゙」


霜氷星・゙氷山からたけ割り゙とは、狛犬斧に強力な冷気を纏って相手を両断する、シシレンジャーの必殺技である。
狛犬斧がバット監督を脳天から縦に筋を付けていく。



「ぬぅぅお…………あぅお…………我がゴーマは……永遠にふめ……………」


筋が凍っていき、そこから真っ二つになっていく。両片は同時に爆発したのであった。



















少年達は回復し、元の生活に帰っていった。恭介はより一層活躍するようになり、智佐子とも上手く言っているらしい。
ただ、裕典はいまだにベンチ。レギュラー、というには至っていない。


「正夫、ありがとう」


「え………」


「僕は自分が太ってるのが嫌だったんだ………でもね、一番いけないのはそれを理由に逃げてる自分なんだって、わかったよ」


「そっか………」


「自分で努力して、レギュラーになる。そして、恭介と甲子園を目指すよ!」


「頑張ってね」


裕典もきちんと前に踏み出して、一件落着。正夫も気分が良くなっていた。


「正夫君」


「?。優美ちゃん?」


優美が教室に入ってくる。おもむろに箱を取りだし、正夫に渡す。


「これは?」


「クッキー、焼いたから」

「え!?」


思わず、声を出してしまう。それを聞き、キッズ達が集まる。


「お、やるじゃん正夫!」


コウのからかうような声。正夫も開けてみると、黒いクッキーが入っていた。



『え…………』



チョコクッキー………ではない。焦げているわけではない。黒い。なぜか黒い。


「召し上がれ♪」


優美の笑顔。その前に、正夫は震えながらクッキーを食した。そして、教室内に絶叫が響き渡ったのであった。











つづく