どういう意図で、こんな時にそんな話をするのかがわからない優美。
しかし、聞かれたからは何かしら答えねばならない。


「やっぱり、コンプレックスを克服したいって思うよ」


「そうだよね」


「でも、そういう悪い部分も含めて自分なんじゃないかな」


「悪い部分も含めて………」


正夫は昨日ゲンに言われた事を思い出す。








゙変わりたいんじゃないのかい?゙











「変わる…………」



何から変える?。今の自分から?



答えが出そうで出ない。迷いながらも、正夫は優美を通りすぎて裕典の下へと向かおうと足を踏み出す。
















゙シュッ!!゙











『!!?』



正夫を通りすぎていった何か。見覚えがある。白い玉、いや、白い球。


「野球ボール?」


球は裕典に向かっているようだったが、後ろを向いてるためか気づいていない。


「あ、危な………」


声を出したが、間に合うような速さではない。白球は、裕典に到達するまで1秒もない。


















゙シュウウウッ!゙










風が吹く。同時に大気に存在する゙気゙が回り、小規模な竜巻が起きた。
竜巻は白球を弾き、裕典には何も影響は無かった。


「今のは………」


「大丈夫アルか!?」


正夫が判断するより早く、裕典に駆け寄ったのは竜巻を起こしたリンだった。
頷く裕典。すぐにリンはボールが飛んできた方向を見る。すると、血相を変えた。


「正夫君、優美ちゃん、後ろ!!」


リンに言われ、急いで振り向く。視線の先には、野球帽を被った少年が立っていた。
リン以外には、それが誰なのか判明するのに時間は要らなかった。


『恭介(君)!?』



恭介は左頬に゙G゙という文字が書かれていた。一度舌打ちをすると、物陰へと走り去っていった。
正夫達は急いで見に行くが、誰もいない。


「もういないなんて………」


2人は周りを見るも、誰もいない。仕方なく、リンと合流をする。
まだその場にいる裕典は状況を読めていないためか、正夫に詰め寄った。


「ねえ、何が起きたの?今のは恭介じゃないの?」


「う、うん………」


無理に誤魔化すような事はできないが、ダイレンジャーキッズであることを悟られないようにしなければならない。


「裕典こそ、恭介達を探してたの?」


とりあえず、話題を変える。逆に裕典がここにいる事を聞く。


「うん…………でもさ、僕に出来ることなんて、ないんだよね」


急に落胆した、というわけではないが暗い口調で言う。


「僕はデブで、ノロくて………何もできやしない………」


どんどん卑屈になってくる。優美は、正夫が言っていたことは裕典の事であると悟った。
同時に、正夫は自分なりにゲンや優美に言われた事への結論を自然に導きだす。


「裕典、確かに太ってたり脚が遅かったりは気になるかもしれない。でも、一番ダメなのは、それにこだわって変わろうとしない自分だよ」


「え?」



良い部分も、悪い部分も含めて自分という存在なのだ。
自分と向き合い、それをどうするか。大切なのはそういうことなのだ。


「気持ちを変えない限り、自分は変わらないんだ!」