夕立が続いており、恭介は雨宿りをしていた。その時も裕典に言い過ぎたのではないかという葛藤があった。


(また言っちまった……でも、あれぐらい言わないと………)


智佐子との約束、自分の思いに気づいてくれるかわからない。
そう考えてる内に雨は弱まり、走ればあまり濡れずに済むと思い、外に出る。















゙バシッ!!゙










「!?」



聞き慣れた音。ボールがグローブに収まった音だ。


(雨なのに………誰だろう……)


奥の空き地から聞こえる。恐る恐る見てみると、細いノッポと横広い影がある。


(ん?)



よく見てみると、それは人間の影とは全く違っている。恭介は上に視線を向ける。


(!!?。か、怪人!?)


長いノッポはバットの形状で、中間には一つ目がある。もう一方はグローブの形状で、やはり中間に一つ目がある。
共通の野球ユニフォームを着ており、胸にばゴーマキングダムズの文字があった。
異形の怪人達のキャッチボールを見てる内に雨も止んだが、恭介はそこから動けなかった。
今すぐにでも逃げ出したいのに、不思議な光景から目を背けられなかった。













゙バシッ゙















゙バシッ゙








「バット監督、何やらキャッチボールに交ざりたい子がいるみたいですよ」



グローブの怪人が喋った。キャッチボールに交ざりたい、それが自分だと恭介は悟った。


「うむ!!では、交ぜてやらねばな!!」


暑苦しい程に声が大きいバット監督。


「グローブ指導員、投げてやりなさい!!」


「ゲッチ!」


グローブ指導員と呼ばれた怪人はボールを振りかぶる。明らかに投球フォームだ。
しかも、恭介に向かって…………否、狙って投げてきた。


「う、うわぁぁァァッ!」

恭介は反射的に躰を反らし、脚を動かす。それを逃さず、全力で走り出した。壁の裏側に来て、安心する。

「な、何だったんだ………あれ………」


息切れする恭介。チラッと振り向く。


「え!?」


驚いてしまう。直線にしか進まないはずのボールが、自分に向かってきているのだ。


「わ、わわ………」


腰が抜けてしまう。しかも、ボールは接近するに連れて大きく見える。いや、大きくなっているのだ。
肥大化して、恭介よりも大きくなっており、そのままデッドボールの如く当たってしまう。


「あ、ああ…………」


ボールが触れても、痛みは無かった。代わりに恭介はボールに飲み込まれるように消えてしまう。
恭介を吸いとったボールは元の大きさに戻って下に落ちた。
転がっていくボールを拾い上げるグローブ指導員。そのボールには恭介の顔が刺繍のように浮かび上がっている。


「これで9人です。バット監督。」


グローブ指導員の周りに、恭介を吸い込んだボールを含めて、9つのボールが浮かんでいる。
それには、若葉台アベンジャーズのレギュラーである少年達の顔が浮かび上がっていた。


「よし!!。これで、我々は最強のチームを作る!!では、まず夕陽に向かって走るぞ!!!」


「ゲッチ!」


雨が止み、夕陽に向かって2人は走っていき、消えていった。