練習を終えた恭介は、スポーツドリンクを飲んでいた。その隣には裕典が座っていて、ギリッと睨むように鋭い目付きになる。


「今日のホームラン、流石だった。でも、あの守備は何だよ………」


「え…………」


のっそりと見る裕典。それで、さらに恭介のイラつき様は深まった。


「お前なぁ、俺達は智佐子を甲子園に連れてくって約束したんだぞ!!」


「うん………」


「そのためにはバッティングだけじゃダメなんだよ!。スピードも、守備も、全部必要なんだ!!」


怒声を上げる恭介は、血相が変わっている。


「なのに、お前は何だよ!!」


胸ぐらを掴む。それでも黙っている裕典。恭介の怒りは、更に強まっていた。



「…………このォッ!」


拳を振り上げる。それを目撃し、正夫は慌てて走った。


「やめなよ!!」


2人の間に入る正夫。


「正夫………何でここに?」


「恭介、やめなって!!」

「…………チッ!」


恭介はバッグを持つと、急いでグラウンドを出て帰ってしまった。
後に残った正夫は振り返り、裕典に迫る。


「いったい何があったの?」


「…………正夫には………関係ないよ………」


下を向きながら話す裕典。正夫は肩を掴み、面と向かう。


「わかるよ………僕も裕典と同じことを気にしてるんじゃない?」


「え?」


「自分が太ってる事を、気にしてるんでしょ?」


「…………!!」


的を射ていた。裕典のみならず、正夫自身もその悩みを告白した。
それも、同じ悩みだったのだ。
















キッズ達は正夫を追ってスポーツセンターにやってきた。野球場はもぬけの殻になっており、2人がいる様子はない。


「いないなぁ」


健一が見回すが、やはりいない。





゙ポツッ゙







夕立が降ったため、スポーツセンターの中へと入ったキッズ達。それぞれがタオルで拭いてる中、コウはふと後ろを向く。
スポーツルームでは、老年の男性が見えた。その男性・おおとりゲンに赤い獅子のような戦士の幻影が重なる。


「あれは!?」


靴を脱ぎ、スポーツルームに入っていく。そこにはトランポリンが用意されており、ゲンが跳ねていた。
年齢に似合わず、軽快な動き。ゲンはジャンプをし、両手を上に挙げた。


「何だ………これ…………」


何と、ゲンは跳ねてから空中で回転をしていた。クルクルと回り、落下しながら脚を振った。


「今のは………」


「!?。今日は顔を知らない子どもが良く来るなあ」

「知らない子ども?。もしかして、ちょっと小太りの男の子?」


「そうだよ」


「どこにいるかわかる?」

「いや、そこまでは………」