「そんなに責めんなよ」


健一は盾になるように、恭介と裕典の間に割って入る。その視線を後ろにいる裕典に向け、ギリッとした後に恭介は校舎の中へ入ってしまった。


「ったく、どうも恭介はカッかしやすいなぁ」


「僕のせいでごめんね」


裕典が謝る。ボールを握りながら、下を向いていた。


「そんなに気にすんなよ~」


コウが肩を叩いて慰める。クラスとしては、コウも敗因の1つであった。
打撃力が強いが、守備は弱いコウはエラーが目立っていたのだ。


「さ、俺達も教室に戻ろう」


健一が呼び掛け、クラスメートは校舎へと足を向けた。トボトボと帰る裕典を見て、正夫は少し引っ掛かるものがあった。


「裕典!」


「正夫………」


「いったいどうしたのさ?」


「何でも………ないよ………」



そう言い切ると、裕典は教室に入った。
















゙キーンコーンカーンコーン゙












「っしゃあ、帰ろうか!」

教科書をリュックへいれると、コウは足早に教室を出る。


「ねえ、゙セブン゙で待ち合わせでいいんでしょ?」


町子が念を押すように確認をする。コウは頷くと、健一と真っ先に゙セブン゙へと向かう。
作戦会議と称して、ダンにケーキをご馳走になろうというのがキッズ達(主にコウと健一)の魂胆である。


「あたし達も行こうか。ねえ、正夫君」


「…………後で行くよ。僕は用事を済ませちゃうから………」



由貴にそう言うと、正夫は教室を出る。しかし、コウ達とは別方向へ変えたのだった。
残された由貴はそれを見送りながら、眉をひそめた。

「どうしたの?」


町子が尋ねてくる。


「正夫君、今日は何か変じゃない?」


「そう?」


「何かを気にしていたみたいだったけど………」




















正夫が着たのは、若葉台町のスポーツセンターだった。あまりスポーツが得意ではない正夫だが、ある人物を追って来たのである。


「えっと…………あ、すいませ~ん!」


「ん?何かな?」


眼鏡をかけた人物に声をかけた。


「このスポーツセンターの人ですか?」


「いやぁ、私は弟に会いにきただけなんだ。あ、弟ならここで働いてるよ」


「そうですか。ありがとうございます」


そう言うと、立ち去ろうとする正夫。だが、ふと男性の胸を見る。
そこには、太陽のようなバッジが付けてあった。


「変わったバッジだ」


「これ?これは………私が母から貰った大切なバッジなんだよ」


「ふぅん」


何か気になる。ただのバッジではなさそうだが………。