―――――3年後―――――


本格的に農場を継いだ雷太。友人の勧めで始めたインターネット通販での野菜の販売は軌道に乗っていた。
無農薬であることも人気の要因だが、何より美味しい。近い内に本格的な会社設立を目指している。
最近は人を雇っていたりもするが、自分自身で畑の手入れをするのも忘れてはいけない。


「雷ちゃーん!」


「あ、さっちゃん!」


幼なじみのさつき。相思相愛で、結婚も秒読みと村では噂されている。


「お昼?」


「うん。でも、その前にお電話。」


渡されたのは携帯ではなくワイヤレスの電話。雷太の村では、電波が入りにくいのである。


「もしもし」


「…………誰だかわかる?」


「あ、アコさん!?」


電話の主はアコだった。高校卒業後にアイドルデビューをし、今も本番直前であった。


「香のこと、聞いた?」


「聞きましたよ!ビックリしちゃって!!」


「また詳しいことは後で話すけど、日にちとか………あ、今行きまーす!!」









寒い中、青年がギターを弾いている。メジャーデビューを控えてる彼だが、街中で弾かないと調子づかないようだ。


「ジェフお兄ちゃん、随分悲しい曲だね」


一人の少女が言う。彼女は3年前に一度死んだ。とはいっても、本人は知らないが。
中学生になった今、彼女はアコに影響されて歌に凝っていた。


「前に、親友が亡くなってね。これはそいつに捧げてるんだよ」



「へぇ~。あたしは、別の意味でちょっと悲しいことがあったんだ~」



「ん?」


「振られちゃった………」


意外だった。何せ、゙あっぢの彼と少女は…………。
まあ、こういう世界もあるということかと、ジェフは思う。


「悲しい顔はしちゃいけないよ。俺も、その親友の分笑わなくちゃいけない。泣いた後には、いっぱい笑うんだ」



「………うん………」


ジェフは曲を変えた。次は優しい音。3歳になる女の子に捧げる歌。
それはレイとカンナの娘への、ダンからの子守唄のようなもの。



(ダン………俺は先輩の笑顔を守る。同じように、世界中の人の悲しい顔を、音楽で癒してみせるよ……)





















よく晴れた日。教会では人が賑わっていた。今日はここで結婚式が行われる。


「か~お~り~!。無茶苦茶綺麗じゃない!!」


アコの前に香は白いウエディングドレスを着て立っている。
そして、式場へと足を運んでいく。一歩、一歩と歩みを進めていく。
そして…………その先にいる人物は…………。






















「汝、天堂竜。この女、鹿鳴館香を妻とし、病めるときも、健やかなる時も、変わらず愛すると誓うか?」


「誓います」


「汝、鹿鳴館香。この男、天堂竜を夫とし、病めるときも、健やかなる時も、変わらず愛すると誓うか?」

「誓います」





















ある花屋。凱は新郎新婦へと捧げる花束を買っていた。


「ありがとう」


「そんな大きな花束、何ですか?」


「今日はめでたい日なんだ。親友が結婚する」


「まあ、おめでとうございます」


心から祝福する。親友と愛した女性の結婚。色々あったが、今日という日のためのことだったと思う。
凱は花屋を出る。



「ど、泥棒!」



「!?」



女性の悲鳴。どうやら、ヒッタクリらしい。凱は犯人を追いかけ、足を払う。
犯人は転ぶと、バッグを凱に奪い返され、頭をパコッと叩かれた。


「めでたい日にケチつけやがって……もうすんじゃねえぞ、わかったか?」



凱はその後、女性にバッグを返し、式場へと足を向けた。


「………この野郎!」



「ん?」














゙グサリッ!゙







犯人は自らの行いが怖くなり、逃げ出してしまう。


「こ、こりゃあ………」