照準が定まり、放つ。屈折する光線と直線的な光弾は、同じ場所に命中した。


「ぐッ!!」


それはグレイの右腕の関節だった。火花が散ると、グレイキャノンごと腕が千切れてしまう。
チャンスと見たブラックコンドルはブリンガーソードを持ってジャンプをした。

「ぐぅぅ………オオオッ!!」


左手のハンドグレイザーを撃つ。゙コンドルフィニッシュ゙をしようとしたブラックコンドルに命中し、落下させる。


「っ痛ぅ………」



「ヌンッ!!」

「!!?」


赤い電子カメラが恐怖を誘う。グレイはブラックコンドルの頭に向かい、手刀を何度も繰り返した。
マスクはへこんでいき、やがて割れてしまう。中の凱の左目が剥き出しになるくらいに、ボロボロになっていた。


「あうぅ………」


痛むブラックコンドルをよそに、落ちたブリンガーソードを拾うグレイ。首筋に刃を突き付ける。


「これで終わりだ………」

振り上げられたブリンガーソード。ブラックコンドルは焦りと恐怖があった。しかし、割れたマスクから見えるもの。
それを文字通り肉眼で捉え、活路を見いだす。


「フンッ!」


「勝負は………」


ブラックコンドルは回ってブリンガーソードをかわす。そして、そのまま前方へジャンプして、見つけたものを獲り、構えるブラックコンドル。


「終わってないぜ、グレイ!!」





゙スドンッ!!゙



燃え盛る砲撃。それはグレイが持っていたグレイキャノンだった。


「ぐおッ!」

胴に直撃し、グレイは破片を散らす。更に、思わずブリンガーソードを放り投げてしまう。
それを見逃さず、ブラックコンドルはグレイキャノンを捨てて飛び上がる。ブリンガーソードを掴み、真っ直ぐと伸ばす。


「ッツァァァッッ!!」







゙ドズッッ!!゙









「ぬぅぅ………ゥオォッ!!」



゙ピチャ、ピチャッ゙




オイルが垂れていく。ブリンガーソードはグレイを貫き、火花を散らしていた。
ダメージの蓄積もあり、グレイの頭脳に当たるメインコンピューターとあらゆる配線は壊れていった。


「ぐ………………」


力を出せず、仰向けに倒れたグレイ。もはや、機能を停止するのは時間の問題だろう。
変身を解き、グレイを見下ろす凱。これが宿敵…………いや、戦友との別れになる。
変化しない表情でも、凱にはわかる。本気ではあったが、グレイは死ぬ気だった。
死に場所を求めて、自分と戦ったのだ。


「グレイ…………」


「…………言うな。わ………わた……しは戦士………最後を………見られたく………ない………」


戦ってくれた事を、言葉にはしなくても感謝している。他でもない、結城凱という戦友に討たれたのだ。
丁度、最後の1本の葉巻を口に添える。形だけでも気分を味わいたい。





゙ボッ!!゙





「??」


もはやメインカメラもショートし、あまり見えないが煙が見える。
ありがたい。凱が葉巻に火をつけてくれた。自分への手向けだろう。
凱は何回か見返すが、何も言わずに去っていった。本当に自分の意を汲んでくれたのだ。






゙~~~~゙





「…………マリア………」



幻聴か、走馬灯か、マリアがよく弾いていだ熱情ソナダが聞こえる。
在りし日のマリア。美しい。思えば、そこから自分は兄弟機のブライトとは違ったのだ。
戦闘用ロボットであるがゆえに、゙心゙というものはない。この葉巻を吸うのも、酒を楽しむのも、早くいえばプログラムが余興として組んでるものだった。
しかし、マリアを愛したことで変わった。煙草も、酒も、戦いも、すべてを自分の中で受け止めることが出来た。
愉しくもあり、悲しくもあった。彼女の死に際に涙したのが、証明となる。
そして、満足して死ぬ。これは、゙心゙を持つ命が自分に宿っていたというのではないだろうか。


「マリア…………私も…………」









ピアノが鳴り止む。グレイのメインカメラである眼は光を失い、葉巻も落としていた。
ただ黒い鉄の塊になったグレイを、冬の冷たい風が一層冷たくしていった。