海岸での戦いから1週間が経過した。ダンは重症を負い、来るべき最終決戦が半年先でも、回復は間に合わないという診断をされている。
死なないだけ良かった、というのみだ。アコとダンは付き添うように看病を続けている。
一方で、竜はトレーニングルームに入り浸っている。難易度Sのシュミレーションを何度も繰り返し、夜遅くには装備の調整をしている。


「竜、休まないと………」


「ん?ああ………」


香の言葉にも耳を傾けようとしない。また、凱は竜の態度が気にくわなかった。
リエを喪った辛さは、自分達でははかり知ることはできない。しかし、長く仲間として戦ってきたダンへの心配を微塵も見せていないことが不満で仕方がない。


(竜の奴………周りが見えてねえ…………何かあるな………)


凱は、竜が自分達には内密に何かをしようとしていると考えていた。
特訓や整備をしているのは、その布石なのだろう。


「竜…………」



















よく晴れた日。凱の予感は遂に的中した。竜は綾の机に置き手紙を残し、スカイキャンプを去ったのである。


「何て書いてあるんだ!?」








゙長官、みんな、俺はラディゲを許せない。奴は俺の手で斃す。なお、これは俺の独断であり、手出しはしないでくれ。最後に、みんなありがとう。゙














全員が文面に驚く。まさに最後の一文…………それは竜の心情を読み取るのには十二分というほどにわかりやすい。


「あの野郎…………」


わかっていた。凱には竜の考えていることが、何となく読み取れていた。
それなのに、踏み込めなかったがために、こんな行動を引き起こさせてしまったのだ。


「雷太………俺達は何だ?」


手紙を握りつぶし、凱は雷太に問う。


「…………僕らはジェットマンだ。」


「そうだ…………ジェットマンは仲間を見捨てねえ。そうだろ?」


竜の気持ちなんて、知ったことではない。と、゙生意気なガキ共゙なら言うだろう。
香達も一同に出ようとする。


「あ、ジェフ!。貴方は残ってちょうだい」


「え?」


「貴方にはやってもらうことがあるわ」


綾は凱を見ると、互いに頷く。この時点で、凱は事情を知らない。しかし、綾が勝つための方法を打つに違いないという信頼があった。
ジェフを残し、司令室を出ていくジェットマン達。綾もその通りに、ジェフと作業をしていた。


(竜、個人的な感情だけではラディゲには勝てない………)


勝つための方法なら、竜が一番知っているはず。そうでなければ、今までの戦いは無駄になってしまう。


(これが恐らく、バイラムとの最後の戦いになるわ………きっと………)

















基地を出る前、アコはダンの病室に寄った。


「ダン、あたし達、ラディゲを斃してくる」


「え!?」


「バイラムは殆んど斃したから、多分、これが最後だよ」


綾の感じていたことは、ジェットマンの面々も同様だった。


「ダンの分も、戦うから………。きっと、帰ってくるから………」


そう言って、アコは基地を出た。ダンは痛む躰をお越し、モニターをつける。
アコの様子を見ようとしただけだったが、そこには視界を奪う光景があった。