前の記憶を継承しているラディゲにとって、リエの行動は読めていた。


「さあ、マリア。再び俺のものとなれ………レッドホークには渡さん………」


ラディゲはリエを引き寄せ、再び洗脳しようとする。











゙バサッ…………゙














「何!?」


ラディゲの頭上に影がかかる。上を見ると、青い翼がある。


「ラディゲェェッ!!」



それはブルバーダーだった。剣を振り、リエを離れさせる。その後、斬りかかりラディゲと鍔迫り合いになる。


「貴様………俺が殺したはず……」


「何言ってるんだ?。俺はこうして、生きてるぜ…………」


ラディゲからすると、予定外であった。今まで起きたこと、これから起きることも知ってはずだからこその油断。
本来なら、セミマルが孵化した時に殺しているはずのブルバーダーが生きていることを失念していたのだ。


「ラディゲ………お前に殺された仲間の怨み………ここで晴らす!!」


アイリーンの事も含め、ジューザはキッズ達が葬った。ならば、その思想を受け継ぎ、更に邪悪なのは最早ラディゲのみ。
ここでコイツを斃せば、バイラムは消滅すると考え、ブルバーダーは奇襲をかけたのだった。


「く………貴様なぞ、アァァァッッ!!」


剣を弾き飛ばし、ラディゲはブルバーダーに刃を突き刺す。


「グッ………」


『ダンッ!!!』


驚きの中で、アコとジェフは声を上げる。
ベロニカから吸収したパワーも完全に馴染み、ラディゲは今までの比ではないパワーを手に入れていた。
血が垂れ、ブルバーダーはその勢いを失う。しかし、眼は死んでいない。
口から火炎を吐き、至近距離からラディゲに命中させた。


「うぐ…………」


これも前にあった。とはいえ、以前とは違ってパワーアップ後のため、大したダメージはない。


「残念だったな……………」


「…………ふ…………俺だけが………お前を狙ってるわけじゃないぞ………」


「何?」








゙ズザッ!!゙








「グッ!!」


ラディゲは腰に痛みを感じた。前と同じ。もしやと思い、振り向くとブルバーダーの剣を己に突き刺ずマリア゙の姿があった。


「な………に………」


「せめてお前に一太刀浴びせたかった………ラディゲェェッ!!」


人間の藍リエではなく、バイラムの力を使って突き刺した。
剣は貫通し、ダメージは前の世界よりも深かった。ブルバーダーに気を取られ、リエがマリアの姿になるのに気がつかなかった。


「く…………貴様らァッ!」


グリッ、とブラッディゲートを回して引き抜く。それで、変身が解けたダンは海に放り出されてしまう。


「ダンッ!」


ジェフがダンを救出に向かう。あの深い傷では、戻ってはこれない。
一方で、ラディゲはマリアの袈裟から脇腹までを一閃する。


「ああぁあぁぁあぁっ………」


声にならない悲鳴。マリアからリエへと戻り、血飛沫を上げて崩れていく。


「リエェェェッ!!」


竜の虚しい叫び。


「まさか……こんな筈では………。だが、マリア………お前は……俺のモノだ………フフ………ハハハハ…………」


歴史が狂い、自分の優位性が仇となって、より深いダメージを負ってしまった。。
笑みではなく、苦しさを見せて、ラディゲは消えた。

「リエェェッ!!」



愛する人が同時に倒れた。失う。また。その不安が押し寄せ、竜はそこからリエの下へと向かう。


「リエ…………」


「来ないでぇッ!!」


声を絞り出すリエ。思わず動きを止めた竜だが、その眼に映るリエの顔は酷く青かった。
服は赤色に染まり、脇腹から血が垂れている。


「も、もう助からない………いえ、私はもう生きていてはいけないのよ………」

「な、何を………」


「私は………もう血で穢れているわ………」


魔獣化するために多くの命を奪った。いや、生み出した次元獣の犠牲になった人は数知れない。
そればマリア゙がやったことであるが、彼女はそれを受け入れている。
もう戻れないと、竜に抱かれた時に悟ってしまったからだ。
自分とは対極で、多くの命を守ってきた竜とは、もう共に歩めない………。


「マリア………」


「!?」



崩れ落ちそうになるリエ。