グリナム兵達が騒がしい。ラディゲはそう思って、後を追う。すると、マリアが剣を振り、グリナム兵と模擬戦を行っていた。



「私に傷を付けた者は幹部にしてやる!」



意気が高揚するグリナム兵達。斧で襲いかかるが、明らかに戦闘力に差がありすぎる。
マリアは瞬く間にグリナム兵を薙ぎ倒していった。



「…………」



「健気だ、マリア」


「ラディゲ!?」


生還したラディゲ。健気、という言葉はを使ってはいるものの、内心は嘲笑っているのがマリアにはわかる。



「お前は強くなった………あのトランザさえ………」


トランザはラディゲによって斃された。バイラムでの印象はそうなっている。
単体での力量はともかく、ラディゲは勝利した。また、あの時点よりも、ベロニカから吸い取ったエネルギーは馴染み、力は格段に上昇している。



「それよりもだ………」


突如、ラディゲはマリアを抱き寄せた。そして、接吻。そこに愛はない。恐らく、情緒があるとすれば、悲しみかもしれない。
今まで、こんな事は幾らもあった。マリアがバイラムの幹部として迎えられた時には、既にラディゲは抱いている。
そこから、マリアは藍リエという人間から遠ざかってしまっている。


「今度こそ、お前を俺のモノにしてやる………」


「今度………?。!!?。ウッ………」


首筋から激痛が走る。何かが張り付き、血を吸っているかのよう。
ラディゲから離れ、マリアは首筋に手をかける。そこには、卓球ボール程の星形の゙何ががいた。


「こ…………これは?」



マリアが気にする゙何が。ニヤリと笑うラディゲの手は、紅く染まっている。


「俺の聖なる血より生まれ、お前を真の美しき女へと誘ゔデススター゙だ。マリアよ………これでお前は俺のものだ………」


戸惑うマリアだが、だんだんと視界がぼやけていく。同時に、意識もおぼろになっていき、やがて眠ってしまった。
その姿を険しい顔で見つめるラディゲ。ここまでは、歴史通りに進んでいる。



(俺は敢えてトランザを歴史通りに葬った。しかし、なぜ他の事態も歴史に沿っている…………)


ラディゲには謎の事が幾つかあった。この世界の歴史を変えようと、今までラディゲは干渉してきた。
隕石ベムの早すぎる来襲・ジューザの度重なる復活・三魔神をも上回る魔神の存在等、史実と異なる流れへと向かうはずだった。
その度に、ダイレンジャーキッズが歴史を修正していった。
つまり、今回トランザを歴史通り倒したのは、逆に不自然なのだ。自己満足でレッドホークを騙し、トランザを倒したのは、結果的に歴史を修正してるも同様である。
ダイレンジャーがいないにもかかわらず、史実と同じようになっている。


「ディメンシアの死に損ないと、新たなジェットマン……………奴らがいる事が、何を意味するのか………」


考えるより、叩き潰せばいいだけの話なのだ。今度は、万全の状態で迎え討ち、勝利すればいいのだ。
マリアを手に入れ、真の覇者へとなる。