―――――川岸―――――
゙ザアァァッ………゙
滝から落ちてきた水が川と合流し、その瞬間に激しい音を立てている。
眉を僅かに動かし、ほっそりと眼を覚ます竜。まず、状況把握に頭を使う。
今自分がいるところは川岸。体は濡れていないようなので、川に落ちたわけではない。
上を見ると、樹の根が土からはみ出して網のように絡まっている。どうやら、あれに引っ掛かったから無事だったようだ。
「……………ッ痛ゥ!」
腕に痛みが走る。意識をしっかり持った分、神経が正常にダメージを伝えている。
トランザにはこっぴどくやられたもんだと思い、左腕を見る。
「これは…………」
痛みがある場所に包帯が巻いてある。手慣れた上手い巻き方ではないが、止血もしてあるようだ。
「いったい、誰が………」
香やアコではなさそうだし、凱ならこうはしないだろう。
゙チャポ………゙
水から何かが離れた音。竜は体を起こして、恐る恐る見てみる。
そこには、見知らぬ男性がいた。服装は地味で、ダークグリーンのジャケットにベージュのズボン。遠目ならば、作業服と思える。
「気がついたようだな」
「?。あんたが、手当てをしてくれたのか?。」
「ああ…………」
返事をした男性は竜を睨むように見て、口を開いた。
「俺もトランザを憎む者だ…………」
「!?。トランザを………」
思い当たる節は幾つもある。゙バイラム・ウォー゙で全世界が壊滅的な被害を受けた。
この男も家族や友人を失っているのかもしれない。
「貴様の戦い、見ていた。俺達が力を合わせれば、或いは奴に勝てるかもしれない」
「え?」
「奴は確かに強い………しかし、己が最強と自惚れている。そこを突くのだ!」
確かに、この男の言う通りだ。あの慢心こそ、トランザの唯一の弱点。
「でも、そんなこと………あんたはいったい………」
「俺のことなどどうでもいい!」
手をさしのべる男性。竜はその手を掴み、立ち上がった。
肩を担がれ、共に歩き出す2人。
(こいつは…………)
゙バイラム・ウォー゙にて戦地にはならなかった街中。その角で、ダンは傷ついて倒れていた。
人気がなく、誰も通りそうにはない。だからこそ、アコを先に走らせ、足止めをするために残った。
トランザに挑んだものの、惨敗も惨敗。
゙ディメンシア人…………過去の敗北者など、コレクションにするに値しない…………゙
守るべきアコにすら及ばぬ力。ダンは己の弱さへの怒りと、アコの無事を祈ることしか出来なかった。
人混みの中、後ろを振り返るアコ。視線の先には、普通の人間を装ったトランザがいる。
ダンが敗けたことがわかる。無事を祈りつつも、今は逃げることしかできない。
例え戦ったとしても、一人では敗けるのが積の山。今は如何に戦いを避け、トランザから遠ざかるかが肝要。
(逃げてどうなるの?竜やみんなは無事かわからないし、コウ君達はもういないのに……)
急に弱気に襲われ、次第に脚が鈍くなる。その時だった。振り向くと、トランザはこちらに気づいて接近してきた。
「や、ヤバ………」
アコは角を曲がり、ビルを登っていく。一気にかけ上がり、屋上まで辿り着く。
バードニックウェーブによって身体能力が上がっている事を活かし、ビルを跳び移っていく。
10程移りきると、下を見渡す。人が歩いているが、トランザは見当たらない。
「木を隠すなら、森の中ってことかな?。あたしを見つける事なんか………」
゙ザアァァッ………゙
滝から落ちてきた水が川と合流し、その瞬間に激しい音を立てている。
眉を僅かに動かし、ほっそりと眼を覚ます竜。まず、状況把握に頭を使う。
今自分がいるところは川岸。体は濡れていないようなので、川に落ちたわけではない。
上を見ると、樹の根が土からはみ出して網のように絡まっている。どうやら、あれに引っ掛かったから無事だったようだ。
「……………ッ痛ゥ!」
腕に痛みが走る。意識をしっかり持った分、神経が正常にダメージを伝えている。
トランザにはこっぴどくやられたもんだと思い、左腕を見る。
「これは…………」
痛みがある場所に包帯が巻いてある。手慣れた上手い巻き方ではないが、止血もしてあるようだ。
「いったい、誰が………」
香やアコではなさそうだし、凱ならこうはしないだろう。
゙チャポ………゙
水から何かが離れた音。竜は体を起こして、恐る恐る見てみる。
そこには、見知らぬ男性がいた。服装は地味で、ダークグリーンのジャケットにベージュのズボン。遠目ならば、作業服と思える。
「気がついたようだな」
「?。あんたが、手当てをしてくれたのか?。」
「ああ…………」
返事をした男性は竜を睨むように見て、口を開いた。
「俺もトランザを憎む者だ…………」
「!?。トランザを………」
思い当たる節は幾つもある。゙バイラム・ウォー゙で全世界が壊滅的な被害を受けた。
この男も家族や友人を失っているのかもしれない。
「貴様の戦い、見ていた。俺達が力を合わせれば、或いは奴に勝てるかもしれない」
「え?」
「奴は確かに強い………しかし、己が最強と自惚れている。そこを突くのだ!」
確かに、この男の言う通りだ。あの慢心こそ、トランザの唯一の弱点。
「でも、そんなこと………あんたはいったい………」
「俺のことなどどうでもいい!」
手をさしのべる男性。竜はその手を掴み、立ち上がった。
肩を担がれ、共に歩き出す2人。
(こいつは…………)
゙バイラム・ウォー゙にて戦地にはならなかった街中。その角で、ダンは傷ついて倒れていた。
人気がなく、誰も通りそうにはない。だからこそ、アコを先に走らせ、足止めをするために残った。
トランザに挑んだものの、惨敗も惨敗。
゙ディメンシア人…………過去の敗北者など、コレクションにするに値しない…………゙
守るべきアコにすら及ばぬ力。ダンは己の弱さへの怒りと、アコの無事を祈ることしか出来なかった。
人混みの中、後ろを振り返るアコ。視線の先には、普通の人間を装ったトランザがいる。
ダンが敗けたことがわかる。無事を祈りつつも、今は逃げることしかできない。
例え戦ったとしても、一人では敗けるのが積の山。今は如何に戦いを避け、トランザから遠ざかるかが肝要。
(逃げてどうなるの?竜やみんなは無事かわからないし、コウ君達はもういないのに……)
急に弱気に襲われ、次第に脚が鈍くなる。その時だった。振り向くと、トランザはこちらに気づいて接近してきた。
「や、ヤバ………」
アコは角を曲がり、ビルを登っていく。一気にかけ上がり、屋上まで辿り着く。
バードニックウェーブによって身体能力が上がっている事を活かし、ビルを跳び移っていく。
10程移りきると、下を見渡す。人が歩いているが、トランザは見当たらない。
「木を隠すなら、森の中ってことかな?。あたしを見つける事なんか………」