「マリア、まだ探しているのか?」


来る日も来る日もラディゲの捜索を止めることなく、マリアは地上を見ている。
執念と呼べる行為に、グレイは複雑な思いを抱いていた。
マリアは元々、リエという人間であり、レッドホークこと天堂竜の恋人だ。
スカイフォースの宇宙ステーションを壊滅させた際、ラディゲはリエを捕らえ、記憶を操作してバイラムに迎えた。
その理由として、ラディゲは征服をする世界のものをコレクションとして集める趣味を持っている。
現に若く美しいリエは、コレクションとしては最適だったといえよう。
植え付けられた人格゙マリア゙は、その名の通りに冷酷さの中であっても女たる美しさと僅かな母性を残していた。
それが、グレイの感情プログラムが変化をする要因となっている。








ーーーーーマリアを愛してしまった。













戦闘用ロボットであるグレイにとって、゙感情゙というのは実に不要な代物だ。
兄弟機であるブライトと同様、あくまで敵対する生命体の分析・理解をするためのプログラムであった。
しかし、愛してしまったのだ。戦闘には関係なく、一人の女としてのマリアを愛している。
自身が造られ、戦い、そして壊れるまで想定されてなかっただろう。


「マリア…………」



逆にマリアは植え付けられた記憶の中で、ラディゲに対する執着心が生まれている。
元々ある人間としての感情が影響しているのかもしれない。

幾度か、マリアはラディゲと交わったのは知っている。そこにあるのが愛でもやこれば、真実でもないのに。
ラディゲが求めたのもあるが、何よりマリアが納得しているのだ。
まるで、引き裂かれた竜との溝をラディゲで埋めているよう…………。


「ご苦労なことだ…………」


「!!?。トランザ!?」


帰還したトランザが嘲笑う。ゆっくり歩きながら、マリアの肩をポンと叩く。


「あれからどれだけ経っていると思う?。それにあの状況……………多分、死んだのだ。」


゙多分゙。生きていたとしても、再起不能…………。マリアの脳裏にも、諦めの文字がよぎりつつある。
そんな中、トランザはある物を掲げた。


「これがわかるか?」


マリアとグレイの視線の先には、ジェットマンの頭部を象ったオブジェがある。

「グリーンイーグルか………」


一致する造型データを引き起こすと、グレイはオブジェの正体を理解した。


「グリーンイーグルを石化したというのか?」


「その通りだ」


バズーカ型の武器を持ち、マリアとグレイに見せる。


「このバイオガンは、生物を石膏に変化させる。これでジェットマンを俺のコレクションにしてやるのだ!。お前達は、そこで見ているがいい!!」


まるで確定事項であるかのように言い放つ。高笑いをするトランザとは裏腹に、マリアには不穏な気がしてならなかった。