゙バイラムウォー゙から1ヶ月が経過した。世界規模での戦争。
参加した戦士たちのみならず、多くの人々が犠牲となった。
絶対防衛線はネオジェットマンが自爆してまで護った場所だけではなく、次元獣の侵入を許してしまったのも少なくはなかった。



「これでも………まだ勝っただけ良かったのかもしれねぇ……」


街をバイクで走る凱。政府も首都再興への意思は強いものの、長い月日がかかるためか、政策は浮き足立ってる。
しかし、そんな中でも凱は人々が自力で立ち上がり、再興を果たそうとしている姿を目にしていた。








―――――゙希望゙








コウが口癖のように言っていた。ベロニカとの戦いで共闘したダイレンジャーのレッド・龍連者の受け売りらしい。
こんな人々の姿を見ていると、自分も希望を貰えるような気がしていた。
以前の凱ならば、そんな感情は芽生えなかっただろう。
戦う力を得た凱に守りたいものをくれた仲間に感謝している。もちろんキッズ達にも。


「…………」


あの子達は今も戦っているのだろう。そして勝っている。
その事がわかる現象が、凱には見え始めていた。



「!?。そこで何してんだ?」



バイクを停め、座っている少女に話しかける。


「…………あんた、誰?」


気の強そうな少女。若干、町子が入っているような感じである。
それに生意気そうな眼をしている。キッズに出会う前の凱なら、嫌いな部類に入っていた。


「誰でもいいだろ。それより、ここは瓦礫もあるし早く家に帰れ」


「わかってる!。…………花を添えるだけだから………」


ヘルメットを外し、少女の前方を見ると、花が添えられている。
この状況だ。近辺の花屋は開いてないし、避難先で買ったわけではないだろう。
それに、売られているような花でもない。野原や川原に咲いているような小さな花だ。


「誰に添えたんだ?」


「……………お姉ちゃんとお義兄いちゃん………」


彼女の話だと、絶対防衛線を突破した次元獸が流れ込んできた時に離ればなれになってしまい、再会できないままに殺されてしまったのだという。


「ここは、あたしとお姉ちゃん達が住んでたマンションがあったの。」


「……………」


守れなかった。自分達が戦い、勝ったことで人類が滅ぶことは防いだ。
それでも、犠牲者はいる。目の前に、その象徴たる少女が。


「1人なのか?」


「バイラムウォーの前に、お姉ちゃんが産んだ赤ちゃんがいる。未熟児だったけど、元気に生きてる。」


孤独ではないことが、唯一の救いだろう。生きてる。生き続けている。
悲しみは永遠に消えるものではない。しかし、癒しがないわけではない。



「……………名前は?」


「ミチル…………。あんたは?」


「結城……………凱だ。」


バイクに乗せて、送っていく最中も話を聞いた。彼女はダイレンジャーキッズの事を覚えていない。
何度か彼らとは会っていたものの、その記憶がないのである。
やっぱりだった。凱が知ってる中で、ダイレンジャーキッズを覚えているのは自分達ジェットマンと一緒に戦っていた反バイラム連合のみ。
゙バイラムウォー゙で戦ったのは、各国防衛軍とジェットマンのみであることになっている。
本来、ダイレンジャーキッズばジェットマンの世界゙には存在しない。
゙ダイレンジャーの世界゙が修復されているということは、遡及的に゙ジェットマンの世界゙もある意味修復をされているのだ。


(俺は覚えてるぜ……………忘れねえ…………)