「!?。ウオッ!!」




カミーユが蹴り飛ばされる。コウは眼を疑ってしまう。



「今の………声………」


今のはコウではなく、由貴を助けた者の声だった。懐かしく、優しい声。
その者は、由貴を抱えて起こした。


「由貴ちゃん、しっかりして!」


「っ………ん?」


眼をきちんと開き、目の前の人物を見る。すると、自然と涙が出てきてしまう。


「お兄ちゃん………亮…………お兄ちゃん?」



そこには、龍連者に転身する天火星・亮の姿があった。


「ああ。俺だよ!」


「亮お兄ちゃぁぁぁんッ!!」


由貴は抱きついてしまう。まるで、紐男爵から助けてもらった、あの日のように。



「でも………どうして………」


亮は、自分達の世界を襲ったバイラムとの戦いで死んだはず。それなのに、なぜここにいるのかがわからなかった。


「お前達のおかげだ、コウ………由貴ちゃん………」


「あたし達の?」



「世界は修復されつつあり、さっき俺達も甦れたんだ」


「俺達…………もしかして…………」




コウの考えは正しかった。他のキッズの援護に、大五・将児・知・リンが回っていた。



「よぉ、健坊!」


「将児兄ぃ………生き返ったの?」




「大丈夫かい?優美ちゃん」


「大五お兄ちゃん………」



「デンジャーだったね、町子ちゃん」


「知お兄ちゃん…………なんで?」





「正夫君、立てるアルか?」


「うん。リンお姉さんがどうしてここに………」








亮は立ち上がり、オーラチェンジャーを出す。コウ達が受け継いだものではなく、新たに虞翻が製作したものである。


「あとは俺達に任せて、みんなは逃げるんだ!」


亮はキッズ達に呼び掛ける。確かに、体力も気力も僅かなキッズ達よりも戦えるのは明白だからだ。
何より、これ以上子どもを危険に晒すことができない。


「さあ、由貴ちゃん!」


「……………いやだよ………」


「え?」



「あたし達、自分達の世界を直したい………でも、この世界だって、この世界にいる人達だって、生きてるの!」


亮は、こんなにも訴えかける由貴を見たことがなかった。


「ここであたし達は、この世界の人に触れて、守るために戦った。守りたいの…………この世界を………自分達で。今、ここで逃げたら、絶対後悔するから!!」



由貴の言葉に、キッズ達は一同に頷く。
ここで得たもの、触れた人々は偽物じゃない。自分達が戦い、守ろうとした世界。
守りたい、自分達の力で。ここで、それを誰かに押し付けて逃げ出すなんてできない。



「…………強くなったなぁ、由貴ちゃん……」



亮はこんなにも強く訴えかける由貴を見たことがなかった。
しっかりしてるのに、泣き虫なところがあった。しかし、今はこんなにも強い眼をしている。
辺りを見ると、他のキッズも由貴と同じ眼をしていた。自分達の知らない時間が、子ども達を成長させていることを改めて感じさせる。



「亮兄ちゃん、僕らだって………ダイレンジャーなんだから、信じて!!」


コウが言うと、キッズ達は側にいるダイレンジャー達を見る。
そう。キッズ達は、自分達の力で戦ってきた立派なヒーローなのだ。


「………よし!みんなぁぁぁ…………行くぞォォォォッッ!!!!!」


ニッとするキッズ達。さっきまでの疲れが嘘のように吹き飛び、力がみなぎってくる。
憧れのヒーローと共に、今自分達が一緒に戦える喜びは何ともいえない。
コウは、キバエンブレムを出す。亮がいる今、自分はこちらになるほうがいい。
そして、亮がオーラギャザーのキーを引き出す。



「気!」



大五と正夫、優美。



『力!』



将児と健一。



『転!』


知と町子。


『身!』


リンと由貴。


『了!』


亮が右手を引き出す。


「オーラッ………」


そして、コウがキバエンブレムをキバチェンジャーに差し込んだ。


「チェンジャァァァッッッ!!!!!」













゙ピキィィィンッッッ!!゙












「な、何だ?」


カミーユは突然の発光に驚いた。そして、目の前に並ぶ11人の戦士達にも。


「何者だ!?」



問いに答えるように、先ずは赤い戦士が名乗り出る。


「龍連者!天火星・亮!!」



次に、緑色の戦士



「獅子連者!天幻星・大五!!」


「シシレンジャー!霜氷星・正夫!!」


同時に名乗り出る。同じく、青い戦士も。



「天馬連者!天重星・将児!!」



「テンマレンジャー!潤雷星・健一!!」



黄色の戦士も。



「麒麟連者!天時星・知!!」


「キリンレンジャー!瞬光星・町子!!」


ピンクの戦士も息を合わせる。



「鳳凰連者!天風星・リン!!」


「ホウオウレンジャー!鳴水星・由貴!!」


続いて、紫色の戦士。


「クジャクレンジャー!優美!!」


最後に中心にいる、鎧を着けた白い戦士。


「キバレンジャー!吼新星・コウ!!」



全員が終わると、龍連者が天に向かって、掌を挙げる。


「天に輝く、五つ星!!」


脚を上げながら、全員が口を揃える。


『五星戦隊…………』


左掌と右拳を合わせ、キバレンジャーだけは虎のように腕を開く。


『ダイレンジャー!!!!!!!!!!!』




気力のスパークが起きる。それにより、光が発していく。
カミーユはその光景に驚いた。ダイレンジャーは6人と聞いていたが、2倍近い数がいる。
おまけに、龍連者とキバレンジャーが同時に存在するとは理解ができなかった。



「よし、行くぞォォォォッッ!!」











『ハァァッ!!』




全員が分かれ、次元獣を相手にしていく。
鳳凰連者は槍鳳凰を振り回し、翻弄された相手をホウオウレンジャーが斬る。


「いいアルね、由貴ちゃん!」


「リンお姉ちゃんも!」














獅子連者ば霧隠れ゙を使い、混乱させていく。そこをシシレンジャーが凍らせ、クジャクレンジャーが砕いていく。



「いいね、2人とも!」


「まあね!」


「大五お兄ちゃん、右来るよ!!」















天馬連者が重力で足止めし、テンマレンジャーは雷で仕留めていく。


「やるじゃねえの!」


「俺だけだって充分くらいだよ、将児兄!」














麒麟連者が時間を止め、高速移動しながらキリンレンジャーが撃破していく。


「wonderful!」


「わ、わんだふぉー?」














「く…………」


カミーユは鎖を使ってブーメランを操るが、龍連者とキバレンジャーは弾きながら向かってくる。


「よし、コウ!」


「うん!ヤァッ!!」


ジャンプして、飛び蹴りをかますキバレンジャー。カミーユはよろめき、龍連者はスターソードとスターカッターで斬っていく。



「タァッ!トォッ!ハイィィッッ!!」


「ぬ………」


更に、キバレンジャーも白虎真剣で攻める。息があった攻撃で、たちまちカミーユはダメージを負っていく。


「ば、馬鹿な………」


それを見て、龍連者とキバレンジャーは見合って頷き、気力を集中させた。


「天火星・゙稲妻炎上斬!!゙」


稲妻と炎をスターソードとスターカッターに宿し、×型に振る。


「吼新星・゙乱れやまびこ・山嵐!!゙」



音波を宿した剣を振る。同時に斬撃を受けたカミーユは火花を散らしていった。


「まさか………この私が…………」


今にも倒れそうだが、それを許さんとダイレンジャー達は一ヶ所に集まって気功弾を準備していた。


『ウルトラ気力ボンバァァァァッッッ!!!!!!!!』


今までにはないくらい巨大な気力ボンバーが生まれ、カミーユも含めて周囲の次元獣を消滅させた。


「よっしゃァッ!」


天馬連者が喜びを表すも、キバレンジャー達はすぐに走り出した。まだ、肝心な奴が残っているからだ。