ベロニカ体内にいる雷太や香は、信じられない光景を見ていた。
ラディゲとトランザが争っている。仲間のはずの2人がなぜ…………。


「ぐ………ラディゲ、この好機に………」


「ああ、そうだ!。貴様を潰す好機だ!!」


実力ではトランザのが上だが、不意に受けた電撃による麻痺がまだとれない。
ラディゲには十分勝つチャンスはある。



「ああぁぁァァッ!!」


ブラッディゲートを一気に振り下ろす。頭を斬れば、流石のトランザであっても仕留められる。
刃が迫り、両者の顔には対照的な汗が流れていた。













゙バシッ!!゙











「な………」



ブラッディゲートが止まった。額に触るギリギリのところで、トランザが白羽取りで防いだのである。


「く………」


動かない。もう麻痺がとれてきた事から、効果は長くは続かないことにトランザは気づく。


「お前は今の一撃以外に、俺を殺すチャンスは無かった……………許さんぞラディゲ!!」



刃をずらし、ラディゲの腹部に蹴りを入れる。よろけたところに拳で顔を突く。

「ぬ………ぐぐ………」


鼻血が出ている。しかし、そんなことを気にする暇などない。









゙シュッ、ピュルル゙











「な、何!?」


ラディゲの体に触手が巻きつき、壁へと引き寄せる。そして、捕らえられてる人々と同じように生命力を吸われ始めた。



「ぐおぉぉ………ヌゥアァァァッッ!!」



振りほどこうとしても、パワーが発揮できない。むしろ、吸収される勢いが増すばかりだ。


「ラディゲ……………貴様の罪、せめて俺の勝利に貢献することで償うがいい………」



ニヤリとして、トランザはその場を離れた。ラディゲの造反劇の一部始終を見ていた雷太達は、唖然としながらもラディゲの様子を見ている。



「く…………ぬぅぅう………俺は死なん、死なんぞォォォッ!!」






















゙………オマエハシナン………゙
















「!?。だ、誰だ?」


幻聴………ではない。香達もそれは聞こえていた。いや、見えていた。
ラディゲの目の前に、不気味な蒼白い光を放つ炎のようなものが漂っていた。まるで、怪談に出てくる火の玉といえるものだ。











゙…………オレ…………オマエ……………オマエハ……………オレ………゙












火の玉はゆっくりとラディゲの胸へと入っていく。すると、カッと眼を見開き、苦しみ出した。



「アアァァッ!や、やめろぉぉォォォッ!!」



さっきとは違う苦しみかたをしている。アコの知っている限りで例えるならば、高熱を出して死にはぐっている時のような苦しみかただ。
自分を見失いそうになりそうな苦しさ。しかし、同時に触手から赤い稲妻が迸り始めた。



「ギャアァァァッッ!!」














ベロニカのコクピットでは、グレイがトランザに変わって操縦をしていた。
凱が操縦するグレートイカロスは、しぶとく抵抗をしているため、決め手を与えられないでいる。


「く………マリア、出力を上げるぞ。」


「ええ。………?。これは………」


「どうした?」



「ベロニカのパワーが…………低下していく………」

エネルギーゲージは40%程になっていた。コクピットからでは、原因すら不明の現象であった。




















ベロニカのエネルギーが減っていく原因。それは、ラディゲが逆に吸収しているからである。
離れようとする触手を掴み、これでもかというくらいに吸っている。


「ハァァァァ…………ラァァァァッッ!!」



やがて稲妻が消え、ラディゲ息を切らしながら壁から脱出した。


「ハァ…………ハァ……」


そのままギロッ、と鋭い目つきで雷太達を睨む。つい、3人は息を呑んでしまう。
ラディゲは雷太に近づき、ブラッディゲートを構えた。


「ククク…………ジェットマン………貴様らは俺の獲物………トランザの手にかかってはならん………そう、今度こそな………」



刃を振り、ズバッと触手を切り裂いた。雷太は驚く。敵であるはずなのに、なぜ助けたのか。



「ククク…………フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッ!!!!!」



高笑いをしながら、ラディゲはさっきの蒼白い火の玉に変化し、消えてしまった。
雷太は目の前で起こった現象を考えながらも、優先すべきもののためにブレスを押した。


「クロス、チェンジャー!!」


イエローオウルに変身し、ブリンガーソードで触手を斬っていく。
香は美紀を抱き起こし、立つのを手伝う。


「大丈夫?」


「う、うん………これでママに会える?」


「ええ。会えますわよ。」

衰弱していたが、元気を取り戻す美紀。香達も変身し、人々を連れていった。









ベロニカに潜入したレッドホークとグリーンイーグル。ダンが変身したブルバーダーもいるはずだが、違う場所から潜入したためか今だに会えない。


「竜さん、トランザってのはそんなにヤバいんですか?」


「ああ………ベロニカを作ったのも奴だ。頭脳も、実力を発揮するのに貢献してるぞ。」


「ほう………それは光栄だ」



『!!?』


正面から声が聞こえ、2人はブリンガーソードを構えた。現れたのはトランザ、手にはボルトランザを持っている。


「トランザ…………」


「レッドホークとルーキーか…………今の俺は気分が良くないんだ…………悪いが憂さ晴らしに付き合って貰おう!!」


ジャンプして、レッドホークを斬りつける。


「うわぁァッ!」


「竜さん!」


バードブラスターを抜き、すぐに引き金を弾く。しかし、壁蹴りをしてかわし、接近したらボルトランザでグリーンイーグルを斬った。


「おわぁぁァッ!」


着地して振り向き、メタルトランサーのボタンを押す。
トランザの周りに6つの光球が現れ、レッドホークとグリーンイーグルに命中させた。


『うわぁぁぁァァッ!!』

たったこれだけの攻撃でも、一発が重いためか、結構ダメージを負ってしまう。

「フハハハハッ!。さあ、いつもみたいに立ち上がれ!!」


再びボタンを押し、同じように光球を出して立ち上がろうとするレッドホーク達に当てる。


「ぐ………な、なんて奴だ………」


グリーンイーグルも、これだけでただの次元獣とは格が違うのがわかる。


「さあ、まだまだ………俺の気分が晴れるまでは付き合ってもらうぞ………」



「そうはさせねぇ!」


「だ、誰だ!?」


再三、ボタンを押そうとすると、青い翼が背後から現れる。剣を抜き、トランザに斬りかかった。


「貴様はブルバーダー!?」







゙カキンッ!゙









ボルトランザで防いだものの、不意に受けたせいか弾けない。


「カァッ!」


ブルバーダーの口から炎が放たれる。


「ぐわっ!」


まともに受け、顔を押さえる。ギラッと睨む眼の付近には、軽い火傷を負っている。


「おのれ………」


「竜、ジェフ、ダン!」


「!?」


後ろを向くと、他のジェットマンが援護に来ていた。


「き、貴様ら……どうやって………」


「さあ、何故かしら!」


ホワイトスワンがとぼけたように言うと、ビークスマッシャーを構える。
同じように、レッドホーク達もビークスマッシャーの照準をトランザに向けて発射した。



「く…………うわぁぁッ!」



幾らトランザといえど、囲まれての回避は無理がある。
メタルトランサーにある緊急転送ボタンを押し、その場を離れた。



「アコ先輩、みなさん、無事だったんすね。」


「え………まあね。」


今はラディゲが自分達を助けた事を伏せておいた方がいいだろう。
あまり事を荒立てない方がいい。


「他の人は?」


「心配しないで、竜。もう脱出したわ。」


「でも、安全に避難できる保証は………」


「とても頼りになるお方が、みなさんの警護をしてくださってますから、大丈夫ですわ」


ホワイトスワンの妙な自信。レッドホークは疑問に感じながらも、そこまで言う人物に期待するしかない。


「よし、俺達は凱の待っているグレートイカロスに戻るぞ。」















ベロニカを脱出した人々は、ゆっくりではあるが進めていた。


「私がみなさんを守ります」


それは嘉挧だった。彼もまた、キッズ達とは別の場所で戦っていたのである。


(あの子らが戦っているのに、世界の危機に私が何もしない………というわけにはいくまい。)



戦う決意をした嘉挧は胴着ではなく、真紅の鎧を纏っていた。
キッズはもちろん、亮達にも見せたことがない。次元獣も襲ってくるが、圧倒的な実力を以て退けている。

「ねえ、おじさん………何でそんなに強いのに、ジェットマンと一緒に戦わないの?」


「?」


美紀が尋ねてくる。その力を目の当たりにし、子どもながらに嘉挧の戦闘力の高さに気づいている。


「お嬢ちゃん…………私はね、信じているんだ。ジェットマンや大連者………ヒーロー達の強さを………」


そう。どんな困難も乗り越えるヒーロー達の強さ。特にダイレンジャーには、゙来るべき時゙のためにこの障害を自力で切り抜けてもらわなければならない。



(急げ………コウ、みんな!)