教室に戻ると、クラスメート達は昼食を満喫している。自分の席の周りに座る京子や琴絵は、持参した弁当を美味しそうに食べているではないか。


「あれ?アコ、一番早く出たのに収穫なし?」


「トラブルがあってさ…………。ジャムパンだけ………」


椅子に座り、パクッと口にする。苺ジャムではなく、ブルーベリージャムだったことは意外で味も中々であるが、いかんせん腹に溜まらない。


「足らないなぁ………」


ズボォ~、といった雰囲気のアコに戸惑う友人達。そこで京子は、そっと声をかけてみる。


「あのさ、アコ、おにぎり1つ食べ…………」


「食べる!!」


バッとかすめ取り、アルミを取り除いて口に入れる。


「お~~いしい~~」



程よい水分を吸い込んだ米と、しっとりした海苔。加えて、タラコというナイスな具でアコはテンションが上がる。
まさに、変身して飛び立ってしまいそうだ。



「そういや、最近アコ良く食べるよね。」


左脇から見ていた愛の言葉に、ギクッとしたように手が止まる。
ジェットマンとして日夜戦っていると、カロリー消費も激しい。


「アコの家でカラオケマイク買ったらしいから、それで歌の練習してるんでしょ?」


京子の言葉に頷くアコ。琴絵は?といった顔をしている。


「いやぁ~、あたしも歌を上手くなりたくてさ~。ついつい練習しちゃうんだよね。」



京子はアコがジェットマンであることを知っている稀少な人物。
今の会話でもそうだが、日常生活でフォローしてもらう部分は多々ある。
















「……………ように~………」




゙パチパチパヂ



「やっぱ上手いし、いい声だねん♪」


帰り道、歩きながら京子の歌を聞くのが日課であり、楽しみになっている。
ボイスジゲンの事件があったものの、京子の声はますます透き通ってきており、歌も磨きがかかっている。彼女の夢であるオペラ歌手。音大への推薦も決まり、夢に向かって着実に近づいている。


「………にしても、カラオケマイクの嘘は流石に無理があったんでないの?」


尋ねられた質問に、苦笑いする京子。そりゃあ、いくら好きだからって、アコは夜中まで歌ってるタイプではない。


「でも、アコの夢に沿った嘘よ?。」


「……………バレてるもんだね。流石は親友………」
















その日の夜、アコはある紙を前に腕組みをしていた。ほぼ最後となる進路希望調査。
ジェットマンで忙しいアコには、大学進学のための勉強も就職活動も行えていない。
一応、ジェットマンとして臨時隊員としての籍を置いてるため、スカイフォースへは無条件就職が可能ではあるが………。



「京子にはバレてるんだね………」


机の引き出しから、ある紙を取り出す。そこには、゙ベイクドコーポレーション主催・第14回アイドル発掘大会゙の文字があった。


「アイドル…………」


最近、アコは考えていた。ジェットマンとしての戦いが終わった時、平和が戻る。
しかし、バイラムを斃しても、戦いの爪痕で人は悲しくなり、暗くなる。
そんな時、歌や芝居で人の心を明るくできたら。自分の力で、絶望してる人を救えたら。