由貴の机は右斜め上。コウは紙に゙ごめん゙と書き、投げようと腕をヒョイと挙げる。


「!?。コウ、何をやってる!!」






゙シュンッ!!゙





半分ほど使い込まれたチョークが飛ぶ。それは投げようとしていた紙を撃ち抜き、教室の壁へぶつかって砕けた。


「な、なんでもありましぇん・・・・・・」











休み時間、コウは由貴の机に向かい、横に立つ。


「あの・・・・・・由貴ちゃん、さっきはごめん。」


「・・・・・・わざとじゃないのはわかってるよ。あたしこそ、痛くしてごめん。」


恥ずかしそうに顔を赤らめてお互いに謝る。特に、由貴は自分が胸を掴まれたのに、張り手をした罪悪感の方が強かった。
チャイムが鳴り、授業が始まる。その後をついつい追ってしまう。
最近、妙にコウが気になってしまう。



(コウ君って不思議だな・・・・・・)


思えば、初対面は奇しくも大五がクジャクと出会った日と同じだった。
春休みの最中、弟の真司を連れて買い物に出掛け、はぐれてしまった時にコウと出会った。
その時はスカートを捲られ、逃げていったコウを゙変な男の子゙としか認識していなかったが・・・・・・。








(今じゃ、仲良い・・・・・・友達だよね。)


そう思わなければならない、確認するかのように心の中で復唱した。














給食の時間。当番である正夫が、気をつけながらよそる。受け取った子ども達は席につき、いただきますの合図と共に食べ出す。
男子陣はおかわりを争い、女子はそれを呆れながら見るといういつもの光景。
そんな中、コウは牛乳パックを見ていた。



「コウ、どうしたのよ?」

町子が気付き、近づく。ジーッと、見ているコウは指でパックの字を指す。


「なんで、100%って書いてあるんだろう?。」


「・・・・・・う~ん・・・・・・」


生乳100%と記載されている。牛乳は牛乳ではないのか、そんな疑問を抱かせる。


「それはね、牛から搾った生の牛乳をそのまま使ってるってことだよ。中には、脂肪の粉を足してあるものもあるんだよ。」


クラス1の物知り、眞木宗太。物知りだからか、名字のせいか、゙ドクター゙と呼ばれている。
というより、ドクターと呼ばれたいらしい。


「へぇ~。流石はドクター。」


疑問が解決され、コウと町子、クラスの子ども達は納得した。


「だから、生乳(なまちち)って書いてあるんだぁ。」


コウがそういった途端、クラス全員が固まった。驚いたコウはキョロキョロと辺りを見回す。


「え?何々?」


健一は指でコウの後ろを指す。振り向くと、そこには赤いオーラに包まれた町子が拳を握り締めていた。



「え・・・・・・」


「そればせいにゅゔって読むんじゃボケぇぇェッ!!」




゙BAKOOOOON!!゙



町子のアッパーが炸裂し、コウは回転しながら教室の天井へ突き刺さった。