ある廃棄物処理場。誰かに棄てられた赤いランドセルが眠っている。
くたびれたキーホルダーが下がっており、革が劣化で少し破けている。しっかりと使われたのだろうが、子どもは成長して中学生になり、もはや必要ではないのだろう。
役目を終えたものは、棄てられる。それは人間が扱うものの宿命である。
それでも、長く扱ったものには心が宿るという。いや、宿らせるといった方が正しい。
今、異次元から次元虫がランドセルに寄生される。すると、ランドセルは発光し、光が飛び散っていった。












2人の少女が歩いている。学校の帰りで、これから遊ぶ約束をしている。
話に夢中になり、謎の光がランドセルに憑依したことには気づいていない。


「じゃ、また後でね美咲ちゃん。」


「うん!」



美咲は友達の香苗と別れる。今日は一緒に宿題をしようと思う。
本当は、クラスの女子のリーダー格であるミチルにも声をかけたものの、他の学校にいる男子に熱を上げて追っかけ回すのに忙しいと断られた。
仕方ないと思い、2人でやることにしたのである。まあ、宿題を終えたらゲームをするのだが。



「ただいま~。」



家に着くと、急いで美咲は階段を上がって自分の部屋に入る。ランドセルを机に置くと、中にある筆記用具入れと算数のプリント、ノートだけを取り出して口を閉めた。
それを手提げ袋に入れると、部屋を出ようとドアノブに手を回す。










゙………待って………置いてかないで………゙









「!?」


自分に向けられた声。美咲は反射的に振り向く。だが、誰もいない。気のせいだったか。









゙………待って……゙



「………??」


気のせいではないらしい。待ってほしい、置いてかないでほしい、そういった声が繰り返される。
美咲は気味が悪くなってくるが、何だか動けなくなってしまった。正体が知りたいという好奇心と、恐怖が縛っているのである。


「だ………誰?」


やや声が震えている。見知らぬものに恐れを抱かぬわけがない。
美咲は部屋を見渡す。朝出た時と何も変化はない。だが、その内に気づいてしまった。
ランドセルを窓側に向けていたはずなのに、今は自分を向いている。
恐る恐る部屋の中央に歩いていく。すると、ランドセルはそれに追従して自分に向いてきたのである。



「ランドセルが………う、動いてる………」