コウは優しい。だからこそ、自分の好意も゙友達゙として受け取っている。
そう思っているからこそ、そういった解釈になるのであろう。



「…………………そうだよね。ごめんね、コウ。」




ちゃんと、自分の言葉で伝えると言い、コウとはそこで別れた。ただ、それだけだったのであり。
勘違いが解けたわけじゃない。ただ、わかってしまったのである。コウは自分を゙友達゙として認識してるんだと。
夕陽と紅葉が同じ夕焼け色になった通学路の途中、町子は長い髪を風に揺らしている。無意識にヘアゴムを外し、フワッと舞うように下りる。
冷たくなってきた夕暮れを歩く。元気がいい小学生が通ると、小4を思い出す。
あの頃からコウが好きと想い続けて、今日に至るのだ。まだまだ、諦めきれない。だが、たった1つ………。



「………バーーカ…………」















もう10月も終わりに近い。日没前の夕暮れとススキの組み合わせは、一種の寂しさを感じさせる。
少し遠回りしようと思いつき、道を迂回する。未来のみんなの姿を、見てみたい気もするのだ。
まずは、照英ジム。ボクシングジムで、将児と健一が通っている。前まで行くと、窓が開いていた。やはり練習中は暑いのだろう。
チラッと覗いてみると、健一がシャドーをしていた。拳を振る速さは、明らかに小学生の頃の比ではない。
将児もいる。後輩を指導してるようだ。ベルトが飾ってあるが、どれも日本タイトルのもの。
世界タイトルは、健一の父のものだけだ。どうやら、将児は世界チャンプにはなってないようだ。
しかし、将児の眼はギラギラと燃えている。まだ諦めてはないのだろう。まだ26歳なのだから、これからだ。


「…………ッシ!。田中、時間だ。」


「ありがとうございました!」


指導が終わると、将児は健一のとこまで出向く。



「どうだケン坊、俺とスパーリングでもしねえか?」


「…………ハイッ!!」


そこでコウは覗くのをやむる。特に変わった様子はない。将児と健一の関係も、特に変化はなさそうだ。
その後、コウは商店街を通ってみる。やはり、パン屋の親父は嘉挧じゃない。自分の知ってるおじさんだ。前より禿げたと思う。
そもそも、嘉挧がパン屋になってたのは『ジェットマンの世界』だからだ。この世界は………。


「そういや、道士は………痛ッ!。」



記憶を読もうとすると、頭痛がした。瞬間的なものであるが、割れたガラスのように鋭利な痛みだ。



「…………何なんだろう………何だか……」



少し悲しい。思い出したくないことかもしれない。そう考えたら、コウは回想をやめて、家に向かって歩くのだった。。