花瓶の水を取り替えていたようだ。少女は振り返る時、腰まで伸びた髪がふわりと浮く。


「コウ君?」


「う、うん………おはよう。」


一瞬、息を呑んだ。可愛い。朝の日の光もあるせいか、まるで、天使のようと思った。
白い肌、健康そうな太もも。ふくよかな胸に、桜色の唇。髪が長くなってるという以外は、小学生の頃のままだ。


「どうしたの?今日は早いね。。」


「いや、あの………目覚ましを早く設定しちゃってさ。」


つい、答えに困ってしまう。あまりの可愛さに驚いたなんて、言えない。
ついでに、今の由貴の台詞からして、常に遅刻の危険に晒されてるようだ。


「あの、実は………」


「おハロー、ゆきっぺ!あ、コウ君もいたんだ~」


今度は見知らぬ子が入ってくる。どうやら、高校に入学してからの友達みたいだ。
由貴と話してる間に、舞という名前だと知る。思いだそうとしていると、ぼやっとではあるが、舞が由貴と仲がいいシーンが出てくる。
結局、由貴には話を聞けないまま、みんな登校してきて授業に入ってしまった。
正夫は別のクラスみたいだが、健一と町子は同じだ。舞のように新参者もいるが、地元の子が多いためクラスには小学校からの仲が割といる。
授業もなんとなくではあるが、理解は出来た。ということは、体や頭は高校までを経験し、精神だけが小学生ということになる。


(何とかして謎を解かなきゃ……………そのためには由貴ちゃんと話さないと……)


一番、ダイレンジャーに触れていた由貴ならば、何かわかるかもしれない。
何もわからなくても、それが自分が立てた推測の裏付けになる。












チャイムが鳴り、昼休みの到来を告げる。弁当は持ってこなかったので、購買に向かう。
学園ドラマに良くある光景で、学生たちが群がるシーンがあるが、まさにまんまのシーンに遭遇している。すぐに買えそうではない。
由貴にもコンタクトをとれないまま、時間がすぎてしまった。小学生なら、男女分け隔てないが、高校生ともなれば、男女はグループ別に分かれてしまうようだ。
何だか寂しい気もする。リンも恵を経由して友達を作っていったらしいが、女の子ばかりだ。
それが大人になるってことなのだろうか。何だかわからないが、高校生の自分もそれを受け入れてたんだろう。


「……………なんでかな……」


「何が?」


声がしたので脇を見てみると、由貴が立っていた。声よりも先に、視線は由貴の顔に向いている。
何度見ても、清廉潔白・純粋無垢って言葉が合いそうなくらい、幼さを残しながら成長した可愛さだ。