現世では地獄に向けて気力の橋を架ける準備はできたものの、由貴の魂は現状での帰還は難しいらしい。
由貴が地獄で紐男爵達と戦っていることは王青龍によって伝えられたものの、キッズ達が何かしてやれることは一つもない。
「今、他のゴーマ怪人も由貴様を襲っております。」
「え!?どうすれば………」
悩むキッズ達。嘉挧も手出しがない。生者が地獄に行けば、たちまち肉体も取り込まれてしまう。
「僕が、僕が魂になって由貴ちゃんを助けにいくよ!!」
「何だって!?そんな………」
コウが提案することは間違ってない。霊体であれば、地獄での活動は可能なのだから。
「それでは五星陣が解かれてしまいます。………………私が行きます。」
王青龍は中々踏み切れなかったが、自分が行くことにした。
いい機会なのだ。゙あれ゙を大連者に学ばせるには。
「わかった………王青龍、頼んだよ!」
コクリと頷く王青龍。彼女は由貴の体に触れ、念じる。すると、体が光り始めて、気力の橋へ同化していった。
「キャアッ!!」
5体の怪人の猛攻にホウオウレンジャーはたじたじだった。
走って逃げるものの、紐男爵やガマグチ法師は中~遠距離でも遺憾なく攻撃をしてくる。
「トランプ拳奥義~~、ロイヤルストレートフラッシュ!!」
スペードの10、J、Q、K、Aがホウオウレンジャーに向かって一直線に並んでいく。
そのトランプはエネルギー体で、トランプ公爵はJOKERカードをそれに向かって投げた。
すると、カードのパワーを吸収し、枚数を重ねるごとにパワーアップしていく。
ホウオウレンジャーは危険と感じて避け、カードは元いた場所に着弾する。
それは巨大な爆発を起こし、砂塵のようなものまで引き起こす。
「あんなのくらったら………」
「まだザマスよ!ゴーマ歌謡曲で大ヒットした歌を聞かせてあげるザマス!。゙あぁ、いっかんの終わり゙!!」
まるで破壊音波の如き歌を、ホウオウレンジャーは上手いとは思えなかった。
だが、耳鳴りがしてきて、ホウオウレンジャーは動きをとめてしまう。
「う…………く………」
「今だムヒョ!鍵拳・゙鍵閉め旋錠゙!」
腕や脚に小さい鍵がまとわりつく。すると、身動きがとれなくなってしまう。
「今DA!ガマグチ殺法合体奥GI・゙ガマグチシュード!!」
一つのガマグチ覆面を用意し、5体が隊列を組む。
『レデイ………ゴー!!!』
5体は駆け出し、ボールをパスしながらホウオウレンジャーに接近してくる。
「鍵道化師!」
「口紅歌姫!!」
「トランプ公爵~!」
くるりとトランプ公爵が回転すると、赤色ではく七色の覆面があった。
「紐男爵、やるでおジャル!」
「ホホホホホホッ!シュート!!」
紐男爵が飛び蹴りで覆面を飛ばすと、金色に光ってホウオウレンジャーに迫っていく。
(だめ………避けられない………)
これを受けたら大きなダメージを受けてしまう、そう悟った。
だが、鍵が体中の至る所に付着していて、全く動きことを許さなかった。
(こんなとこじゃ…………終われないのに!)
絶対に生き返る。このチャンスを不意にしてはいけない。差し伸べる手を、振り解いたらいけない。
それが命を背負うということだから。待ってくれてる人達がいるから。だから、これを叫ぶのに羞恥なんていらない。
「あたしは………………生きたい!!!」
゙カッ!!゙
突如、地獄に稲妻が走る。ホウオウレンジャーの眼前には巨大な水柱が現れ、敵の攻撃を弾いたのだった。
「これは…………?」
「由貴様…………」
光に包まれた少女がそこにはいた。
「………あなたは………王青龍………?」
何となくだがわかるのだ。自分と同じ性質の気を持つ存在だと。
いや、まるで、自分の一部のような気さえする。
「由貴様………なぜあなたに゙風゙だけではなく、゙水゙の力があるかわかりますか?」
「…………?」
「桃色の風は、生命を表しているのです。時に強く、時に静かな………。強弱はあれど、天よりある風は自らを変えることはしません。━━━━━━━━━ですが、蒼き水大地に接しながらも、蒼空をも写す事ができる…………形を変えることも出来ます。由貴様は、゙運命゙を変えていく力を持っているのです。」
「運命を………変えてく…… 」
ホウオウレンジャーは刀を構えた。何をすべきか、何を望むか。
自分に何かを変える力があるなら、自分を変えたい。今、この状況を打破する力が欲しい。
「王青龍………」
「はい。」
「あたしの力を王青龍に預ける。だから、あたしに、王青龍の力を貸して!」
「…………心得ました。」
ホウオウレンジャーの申し出を承諾すると、王青龍は光の玉…………天宝来来の玉となった。
それを握りしめると、水柱は消えていった。
「ナウはいったい……」
ゴーマ怪人達は一切何が起こったかはわかっていない。
「どうやって水柱を出したかは知らんが、これで終わりでおじゃる!」