そこには、見慣れた人物がいた。由貴である。彼女は辛いものが好きなのだが、甘いものも好きだ。
まあ、やはり女の子といったところだろう。コウはケーキ屋に入り、由貴の肩を叩いた。


「!!?。コ、コウ君………」


「何してるの?誰か誕生日とか?」


「うん…………明日はしんちゃんの誕生日なの……」



しんちゃんとは、由貴の弟・真司のことである。自分達がいる『ダイレンジャーの世界』では、コウとウマが合う腕白少年だった。



「へぇ………でも、買わないの?」


「ううん………コウ君、今日が何の日か覚えてる?」


「え………?。今日は…………あ………」


店内にあるカレンダーを見てみると、今日はすべてが終わっだあの日゙。
次元が歪み、バイラムが『ダイレンジャーの世界』に侵攻してきて、ダイレンジャー・ゴーマと三つ巴の戦いになり、世界は滅びた。
その際、由貴の母と真司は無残な姿で発見されたのだ。


「わかってるの………この戦いに勝てば、あたし達の世界は直るって……。でも、こっちの世界のしんちゃんの幸せそうな顔を見てると………」


来るはずだった7歳の誕生日。同じようで、異なる人物。楽しみにしてたのは同じはずなのに。


「大丈夫。僕らの世界は再生が進んでるさ。虞翻じいちゃんだって、道士と連絡してるんだし…………全部戦いが終わったら、真司の誕生日を祝えるよ。」


いつもコウは明るい言葉をかけてくれる。何も根拠があるわけじゃない。それでも、信じられるのだ。だから惹かれたのだろう。