こんにちは。ちいこの保健室です。
 
学校の保健室の先生を、29年間勤めました。
 
 
長女が高校1年生の時、うつを発症し、
学校で、友達とのトラブルをきっかけに、自分の手首を切って早退してきて以来、高校は休学届けを出していましたが、1年ほど経ち、学校に行く様子もないので退学しました。
 
その頃私は保健室の先生を退職して、夫が始めたコンビニエンスストアの仕事を手伝っていましたか。長女の病気のこともあり、しばらくは長女の様子を見ながら家にいることがほとんどでした。
 
長女も一時期よりは症状が落ち着いているようにも思えましたが、日によってはひどく落ち込んで部屋で泣いていたり、リストカットは私に止められたので、今度は自分の髪の毛を抜くようになっていました。
 
そんな娘の様子を、毎日息を詰めるようにして見守っていた私ですが、娘のうつを早く治したいのに一進一退、なかなか良くならない娘を見て、私自身がどうしても辛くて、民間の「早起き研究所」と言う名前の、何だか怪しい団体に長女を入れたいと、思うようになりました。
 
その団体のコンセプトは、早起きして朝日を浴び、セロトニンを体の中で作って、そしてうつを克服しようという趣旨の、民間療法でした。
 
恵比寿にある「早起き研究所」の事務所にうつの本人たちが集まって、自分の状態や気づきを話し合ったり、早起きをして一緒に体操したり…そんな活動をしていたんだと思います。
 
私はそこに長女を通わせたくて、誘ってみましたが、長女はまだ外へ出る気力はなくて断られました。
 
夫にもこういう団体があるんだと話をして、賛同を得ようと思いましたが、夫も無関心。当時私は夫のせいで長女が鬱になったと思っていましたから、夫にはすごく腹が立ちました。
 
そんな状態なので、私は仕方なく、夫にも娘にも内緒で 30万円払ってそこに入会しました。
 
本人が参加する意思がなくても、保護者が週1回、カウンセラーさんに電話で相談できると言うことになっていましたので、私はとにかく今の自分の苦しい気持ちをカウンセラーさんに聞いてほしくて入会しました。
 
電話でしたので、お顔も拝見したことのない方でしたが、とてもサバサバした明るい感じでした。
 
私がメソメソしながら「今日も部屋から1歩も出てこないんです。ご飯も食べてくれないんです」と訴えると
「1日ぐらい食べなくても平気をお腹がすいたら出てくるよー」と言ってくれて、私はなんだか体の力がすーっと抜けたのを、今でもハッキリ覚えています。
 
そんな調子で毎週水曜日1時間の電話相談の日を、私は心待ちにしていました。
 
毎回泣きながら話をして、少し気持ちがすっきりして心が落ち着く。そんなことを5回ぐらい繰り返したんだと思います。
 
私の気持ちがすっきりしていくにつれて不思議なことに、長女のうつの症状もだんだんと良くなっていきました。
 
「まぁ学校に通わなくてもいいか。生きててくれればそれでいいや」
私の中で、心からそんなふうに思えるようになった頃、長女は
「私、パソコン教室に通いたい」
と言い出しました。
 
長女が自分から何かをやりたいと言ったのは、何年ぶりだったでしょう。私はすぐに近くのパソコン教室に、長女を通わせました。
 
もともとパソコンの操作が好きな娘だったので、上達も速く、楽しそうにパソコン教室に通うようになりました。
 
それからの、長女の回復はとても早かったと思います。
 
今考えたら、あの時娘のうつを夫のせいだと決めつけていましたが、確かに夫は、子どもたちに理不尽なことを押し付けたり、機嫌が悪いと怒鳴ったり…それがきっかけだったかもしれないけれど、娘を苦しめていたのはそんな夫と、それを軽蔑し、夫婦喧嘩を繰り返していた私の姿がイヤだったんじゃないかな。
 
そして私が必要以上に長女のことで落ち込み、毎日ため息をついて、泣き暮らしていたからだったのかも…
 
確かにあの頃の私は、夫と喧嘩することに、ある種の快感を感じ、夫婦喧嘩を仲裁してくる長女を「邪魔だ」とさえ、思っていました。
 
結局「早起き研究所」には、私が5回ほど電話でカウンセリングを受けた後、フェイドアウトしてしまいましたので、一回6万円ほどのカウンセリング料金を支払って、終わりになった感じでしたが、それでも私は30万円使って良かったと思っています。私と長女を助けてくれたと、今でも思います。