オレンジのサンジョルジェ城*10/4
地平線間際の夕日。
街を包み込む鐘の音、話す声が聞こえないほどの強い風の音。
神聖な場所。
とうとう夕日が地平線の向こうに沈んでいく。
長かったような、あっという間だったような、
夕暮れどきは、なんだかせつない。
そして薄紫色に染まった街が、どうにも愛おしい。
旅をするたびに、再び自分がここに訪れることがあるのかを考えると
その道のりの遠さにとても切なくなる。
そして、なぜだか、生きていることを実感するのだ。
夕日が沈むと、示し合わせたかのように、徐々に街に灯りが灯り始める。
温かい小さな灯りたちが宝石のように美しい。
そして、人間の営みを感じる。
高い塔から降り、サンジョルジェ城の入り口へと戻る。
ああ空にはまた飛行機が。
今度はどこに向かうのだろう。
日没ぐらいから、サンジョルジェ城は温かなオレンジ色の光を纏う。
リスボン市街から見える高台のサンジョルジェ城は、それはそれは美しい。
オレンジのお城。
ポルトガル人は素敵な演出を考えたものだ。
嫌味ではないその色は、見るものの気持ちに灯りを燈す。
東の空は、まるでオルセーに飾られている印象派の油絵のよう。
この空、油絵みたいだなあと思いながら、入り口へと緩やかな坂をくだる。
人気のないお城は、どこか中世を思わせる。
この高台で、最後にリスボンの町全体を眺めることができてよかった。
さよなら、サンジョルジェ城。
街が近づいてくる。
ここから見ていると、ミニチュア模型のようだけれども
いざ下に降りてみれば、広くて一日ではとてもじゃないけれどもまわりきれない。
どこまでも続く路地裏迷宮、リスボン。
人の息遣いが聴こえそうな路地、美しい色とりどりの洗濯物たち、
ボロボロになった木のドア、淡い色合いの壁、なんともいえない幾何学模様のタイルの街、
一言では伝えられない、特別な街、
テージョ川はまだ明るくて、なのに東の空は夜の帳が迫ってきていて、
街も天体も、川も空気も、360度全ての世界を、心の中にとどめておきたいと思った。
さよなら、リスボン、さよならポルトガル、
明日、ここを発ちます。








