甲子園行きの切符


甲子園に高校野球を見に行った。

北海道の高校を応援しに。

栄高校と旭川実業。

両校とも、一回戦。

しかし、両校とも一回戦で燃え尽きた。

負けちゃったんだ。

悔しかったよ。


さらば青春の光


写真は、

栄高校が試合に負けてしまい、

試合終了後、

応援席に挨拶しに来てくれたところ。

格好よかったぜ。

きっと彼らは負けっぱなしじゃねーって、

俺はなんだかすげー思った。

負けを知ってる奴は、

負けの痛みを知ってるから。

きっと、二度とこんな思いをしてたまっかよって、

どうしょうもない夜だって越えたい越えたいって、

不器用にでも生きてやるんだ。

自分の生き方を。


甲子園に行って一番最初に思ったのは、

客席にいる人たちの人間ドラマだった。

選手の親。

学校の生徒達。

先生達。

地元の応援団。

その学校の卒業生達。

選手の彼女。

ベンチ入りできなかった三年生。

そして、高校野球ファンもたくさんいた。

その一人一人の想いは、

誰もが誰にも負けてないだろうし、

それぞれに、

なくてはならなかった出会いがあったんだろうなって、

そんな事を思ってたら、

客席を見てるだけでも、

俺は素晴らしい経験が出来た。

試合に負けたチアガールが泣いていた。

その子の親らしき人が、その子の肩を抱いていた。

試合には出れなかった野球部員が、

応援の垂れ幕を走ってスタンドにつけていた。

同じく試合には出れなかった野球部員が、

応援席で大声で叫んで応援してた。

そして打席に立つ一人一人は、

その声援を背中に背負い、

自分の生き様かけて、

真っ白いボールだけ睨み付けて、

思いっきりバットをぶん回してた。


春の甲子園は、

負けちまっても、夏の甲子園を目指すことは出来る。

夏の甲子園は、

もし負けちまったらその瞬間から、

もう同じチームで試合をする事は出来なくなってしまう。

だから、夏の大会の方が儚いのかなとも思う。


でも、

家に帰ってから色々考えたけど、

春の甲子園に負けちまったチームは、

春に同じチームで試合をする事はもう、

二度となくなってしまう。

共に春を過ごす事はもう、

ないのだ。

儚さはきっと、

どこにいてもどこにでも、

同じだけの寂しさを連れてきてしまうのかもしれない。


たださ、

甲子園に行けなかった奴が何人いるだろう。

野球をしたかったのに出来なかった奴が何人いるだろう。

考え方によっちゃ、

あの場に立てた事を、

一生の宝物にも絶対出来ると思うんだ。

そして、

試合に負けたその日を、

まだ続くであろう人生の記念日にし、

この先も生きていって欲しいなと、強く思う。


負けてから何日かは立ち直れないかもしれないけど、

胸張って北海道に帰って欲しい。

北海道中に、

桜が咲くずっと前に、

一足早い、

熱い春を届けてくれたんだから。


ありがとう。

あの日の戦いを見れた事。

無駄にはしねーぜ。


甲子園は、

汗臭くてしみったれてて、

負けをさらしてダセー姿見せて、

緊張や不安や期待の波に飲まれそうな、

そんな緊迫感はあったけど、

空は広くて、

嘘なんかひとつもなくて、

もの凄い大人数の大人も子供も、

追っかけてるのはたったひとつの、

ちーさなちーさなボールだけで、

初めて見た流れ星に負けないくらい、

キラキラしてんじゃねーかって思っちゃうほどの、

そんな瞬間ばかりで、

そんな場所に、

なんと500円で入れて(笑)


ありがとう甲子園★


そして、

そんな場所に行った帰り道。

やっぱり俺は、

歌を歌いたいって思ったのでした。



花男★