実は、

俺の家のスピーカーからは、 いつもCDやレコードを聴くと、

「バリバリバリ」と、何かを破っているような音が、

流れてくる音楽とともに聴こえてくるという、

なんともクセモノだったんだ。

でも、時にはそのヒズミ具合が気持ちよくて そのまま聴いてたし、

そのスピーカーの他に、風呂でも使える小さなプレーヤーがあったので、

そいつを風呂場から持って来て聴いたり、

ウォークマンにヘッドフォンぶち込んで爆音でぶっ飛んだりしてたんだけど、

やっぱり、 エースで四番のステレオには、ホームランを打ってほしいものだ。

このままだとCD回転数最下位決定するところだった。

そしてとうとう、、

四番バッターの我らが(決して複数形ではない。)パイオニアSA7900(アンプ名)が、

ホームラン予告をしたのだ!!

そしてピッチャー、サインはもちろんビクトリー!!

緊張の一瞬!! 球場は静まりかえった!!

ピッチャー第一球、、投げた!!

「カキーン!!」

打ったぁ!!

大きい大きい!!

入るかぁ!!


、、もう、わかりやすく話します。

すんませんした。

聞いてやってください。


調子が悪くなってしまったので、

パイオニアの修理受付案内という番号に電話。

選択肢は、

1、工場に持っていく。無料。

2、工場へ送る。送料負担。

3、自宅に修理してくれる人が来てくれる。家に来てもらう料金2000円。

4、諦めて川にバックドロップ。

方法はこの4つだった。

いずれも修理費、そして部品交換時は部品代金がとのこと。

それはそうなんだけど、

その4つの選択肢の中で一番魅力的だったのは、

やはり「3」だった。

1は、電車代が。

2は送料が。

4は、、

一見、「3」は一番金がかかりそうに見えるけど、

結局そんなに変わらないんじゃぁないだろうか。

そう思った。

むしろ、その場で治るのならば、ものずごく嬉しい。

(もうすぐまたツアーに出るから、家にいない日々が続く。)

そんで、電話先のねーちゃんに、

「3番!!」

と叫び、

今日の午前中。 おにいさんが修理しに来てくれた。


しかし不意をつかれたのだ!!

10時から12時の間に行きますと言っていたので、

まぁ、、10時ぴったりには来ないだろうなぁ、、

10時半以降位なんじゃないかな、、と勝手に思い込み、

9時半に起き、のんびりやってた。

そんで、朝風呂にでも入ろうかと、パンツを脱いだ時だった。


「ピンポーン」


時計の針は10時ぴったりどころか、9時50分じゃないか。


「は、、はい!!どちらさまでしょーかぁ!!」

「パイオニアのものですが修理しに来ました!!」

「は、、はい!!今ドア開けまーす!!」


この時点で急いでパンツを履き、さっきまで履いてたジャージをもう一度履く。

「あ、、おはようございます、早いっすね、、」

「あ、はい、早すぎましたかー?あははははー。」

「あ、、はぁ、、い、、いえ、どうぞどうぞー!!」

パンツ脱いでたとは言えない。

髪の毛は寝癖の芸術作品大爆発だ。

きっとパイオニアのお兄さんに、

(こいつ、、今起きやがったな、、)と思われたに違いない。

しかしなんだかワクワクが止まらなくなってきた。

だって、、

そのお兄さんが俺の家に入った瞬間から、

俺の家は、

電気機器修理工場だ!!


「では、ちょっと見てみますねー、あははははー。」

よく笑うお兄さんだった。

気を使っての愛想笑いという感じじゃなくて、

機会いじりが好きで好きで仕方がない感じだった。

なんか、、いーなーって思った。

そして、俺のアンプ手術が始まった。

「ウィーン」

アンプとスピーカーは、高校の頃、夜にバイトしていたラーメン屋のおやじから、

高校卒業記念としてもらったものだった。

何年一緒にいたかパッと言えないくらい長い付き合いなのに、

こいつの中身を見るのは初めてだった。

「あー、、ここですねー。」

花男家の工場長がうなった。

俺はその風景を見てて、まるでマッサージ師にマッサージしてもらってる気分だった。

よくわかんねーのに、

「そこです、そこです、、いたたたたー」

なんて、 心の中でこっそりつぶやいていた。暗いぞ花男。

結局、 電源を供給する付け根部分が断線していたらしく、

(たしかそんな事を言っておられたはず、、)

なんだかハンダでビヨヨヨヨーと魔法をかけたら、

「これでよし!!、、だと思いますよ。あははははは。」


治った。

のか?

「ためしに何か聴いてみましょう。」

午前中から初対面の男二人で突然の音楽鑑賞会の始まりだ。

俺は何をかけるか5秒間くらいの間、めちゃくちゃ迷った。

「昨日聴いてたボブデュランはちょい暗いかなぁ、、かと言って、フロッギングモリーはやかましいしなぁ、 THE ピーズかけて、淫乱ベイベーとか歌われてもなぁ、、ここは太陽族か!!、、いやしかし、、」

俺は結局、目の前にあったボディドリーのクラシックというアルバムを突っ込んだ。

太陽族のターゲットマークという曲にも出てくる、 ボガンボスというバンドの頭文字の「ボ」は、

ボディドリーの頭文字の「ボ」から来ているという事で買ってみたら、

めちゃくちゃかっこよくてビリビリした思い出のあるアルバムだった。

ボディドリーは四角いギターを弾きこなすんだけど、

そういえばボガンボスのボーカルの「どんと」も、 四角いギターを!!

お兄さん、ボディドリー好きですか!?

と、一瞬聞きそうになったが、

しかしこの際、思い出にひたってる場合じゃない。


曲が始まった。

ズンチャカズンチャカハッピーな気分に。

俺は寝癖大爆発。

しかし二人無言。

そりゃそうだ。

治ってるか治ってないかをしっかり聴き分けるためだ。

しかし一曲目が終わった。

おにいさんよ、早くいつもの笑顔で、

「うん。治りましたね。もしまた何かありましたら連絡下さい!!あははははは。」

と言っておくれ。

俺はどうすればいいのだ?

治りましたねーとも言えないど素人。

二曲目も真ん中に差し掛かったところ。

俺はとうとう口を開いた。


「お兄さんはやっぱり、小さい頃から機械いじり好きだったんですか?」

お兄さんはメガネをくいっと上にあげ、

「やはり小さな頃から、機械に接する事は多かったですねー、あははははは。」

もはや、昼間二人で初めて家で遊んでる高校一年生の気分だ。


しかし、 いーなー。

めちゃくちゃ好きだったんだろうなぁ、、

そんな空気が伝わってきた。

やっぱ、何かをつらぬいちゃってる人って格好いい。

ボディドリーにも負けないROCKを感じた。

そして俺は、もう少し質問を続けてみようと決心した。


「お兄さんはどんな音楽がす、、」

「よし!!治りましたね!!あははははは、よかったですー。」

「あ、、は、はい!!よかったです!!」

そしてお兄さんは笑顔で帰っていった。

あ、ありがとうお兄さん!!

なぞめいた空気をありがとう!!

なんだか俺も魔法にかかった気分で、

夢でも見ていたかのような午前中が過ぎていった。

空はめちゃくちゃ晴れていた。

そんな午前中を過ごし、 午後は太陽族で集まってワイワイ作戦会議。

それも楽しく終わり、

せっかくスピーカーが治ったんだ。

新しいCDを買いたいなぁと思い、 原宿、渋谷の街をプラプラ。

その時に寄り道したいくつかの雑貨屋や服屋さん(THANKYOUマートとランドリーというお店など)

そこでかかってた曲がやたら胸を突き刺してくるので、

店員さんに

「この曲、誰の曲ですか!?」

と、ミュージシャンらしからぬ質問を繰り返し、

いろいろ情報を得て、

最後に入った雑貨屋でフラフラしてたら、


「、、おい!!」


友達が働いてた。

札幌から同じく出てきた修大という奴だった。

奴は「クローバー海賊団」というバンドのギターボーカル。

しかしまだメンバーは決まっておらず、一人で曲を作り続け、

下北沢なんかで弾き語りしてるROCKヤロー(かっこいー男なんだ、こいつが。)なんだけど、

そういえば、この前飲んだ時に、原宿の雑貨屋の店長になったんだよーって聞いた。

「ここかー!!」

「ここだよー!!」

俺はそこでチートスというおかしのキャラクターのパンツと、

スポンジボブの、同じくパンツを買う事にしてレジへ。

、、友達の店でパンツかよ、、とも思ったが、それもまたいーじゃないか。


その後二人で外で缶コーヒー飲みながら少し話した。

俺は普段、コーヒーは飲まないんだけど、 なんとなく付き合った。

おいしかった。

そして少しの時間だったけど、

楽しかったなぁ。


その時に修大が「オススメがあるんだよ!!」と言いだし、

お店でかけてくれた「50回転ズ」というバンドの曲たちが、

本当によかった。

少し前から名前とジャケの強烈なインパクトから魅かれてはいたんだけど、

聴いたのは初めてだった。

ありがとう修大!!

修大にも出会えたのも嬉しかったし、

聴きたかった音楽も聴けたし、

パンツも買えたし、、

またばったり会おうね。

その時はきっと、缶コーヒーを飲もう。


そんな情報を得て、 渋谷のCDショップへレッツゴー。

サブライムトレビュート、フィッシュボーンシングルス、

LINKのアルバム二枚、シングル一枚、

パフィーのHIHI PUFFY AMIYUMI、

そして50回転ズのギャーというアルバムを買ったり借りたりし、

さっきまで、お兄さんが治してくれたステレオで聴いてた。

お兄さんが帰り際にポツリと言っていた言葉を思い出した。

「これで安心して音を楽しめますね。」

そうだよお兄さん。

今、俺は安心して音を楽しんでるよ。

これが音楽だ。

音楽、、ありがとう!!

しかし今現在は、爆音で聴きたいがため、

結局ヘッドフォンでパソコンからひろった音を楽しんでいる。

(治った俺のステレオのヘッドフォンジャックはでかいヤツ用で、

でかいヤツが付いたヘッドフォンは俺は持ってないのである、、)

お兄さん、ゴメンヨ。

近々、でっかい奴に変換できるヤツを手に入れるからね。


そんな一日でした。

明日は仙台に行き、 ラジオ放送だ!!

今日出会った音楽のどれかを放送中にかけたいなぁ、、

とたくらんでいます。

なにがでるかな、、なにがでるかな、、ごきげんようじゃないよ。

しかしなにバカ言ってんだか。

早く寝ろという感じである。

だけど、これだけは言わせてくれ。

ラジオ、お楽しみに!!


今日出会った音楽たちは、 なんだか今日の気持ちをきっと真空パックの中に閉じ込めてくれ、

オルゴールのように蘇らせてくれるんじゃないだろうか。

その事が嬉しく思うほど、

今日は一日、色んな出会いもあり、

いい日だった。


ありがとう音楽。

ありがとう太陽族。

ありがとうお店の店員さん。

ありがとう修大。

ありがとうお兄さん。

また壊れた時は遊びに来てね。

次はきっとお兄さんの好きな音楽をかけよう。


おやすみなさい。


花男★


真夜中ゆらゆらBGM★フィッシュボーン 「シングルス」

初めて聴いたけど、かっこいい!!

わーい!!


素晴らしい世界だなって思えたんだ。


音楽が好きだ。