長楽未央「楽しみの盆栽」 -3ページ目

穴。

相も変わらず毎日暑いですね。

 

 

 

54年前に制作された記念鉢です。

蕎麦釉の窯変が綺麗な出来栄えが良い鉢です。

 

薄作りで造形が鋭敏な飾り映えがする鉢です。

 

 

 

 

 

 

蕎麦釉の深みがある風合いに黒く窯変した釉薬が

しっとりとした趣が素晴らしいく

植える物を引き立てます。

 

一見すると高足の鉢に見えますが

足と胴体部分は分離する構造になっています。

 

 

 

 

 

 

造形的なラインがシャープな凝った作りの台です。

 

 

 

 

 

 

盆栽鉢としては珍しい台が付いた作品ですが

更に珍しいのが台にも穴が空いていることです。

 

 

 

台が付いた鉢は余り見かけませんが

通常で考えられることは台や受け皿を付ける場合、

室内で飾る際に

土や水が漏れて汚さない様にする為の物と

考えられています。

 

 

 

茶の湯でも稀に土の付いた草物を飾る場合があります。

 

お茶会で夜咄と言うのがあります。

 

蠟燭を焚いて夜に行われる茶会ですが

その際に蝋燭で澱んだ空気を浄化するという事で

石昌が用いられます。

 

その石昌を入れる器が石昌鉢です。

 

本来茶会に土の付いた物は汚れるという事で

用いません。

 

ですので、

石昌鉢は水が漏れたり土が零れない様に

穴が開いていません。

 

 

 

小堀遠州が「フクツグソウ(福告ぐ草)」の名称で

好んだとされる「福寿草」ですが、

それを入れる器とされる福寿草鉢も穴が空いていません。

 

 

古渡などの磁器で出来た中国鉢で

受け皿と対になった物は

鉢に穴が空いているものの

受け皿には穴が空いていません。

 

 

 

 

 

 

ですので、

本来の意味からすると台には穴を開けない事が

望ましいのです。

 

そんな台に穴を開けているということは

植えて培養管理する状態から

台を用いるということなのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

対になった台と合わせて

鉢としての完成形なのかもしれませんね。

 

穴が開いている話でした。