ここ二例ほど、典型的な便秘と、その解消の事例を体験した。

娘さんが二人目の孫を出産するということで、自宅出産のお家まで手伝いに来られた女性。まだまだお若くて、活動的な方、それまで便秘などにはほとんどならない、記憶がない感じだったらしい。
しかし、出産を挟んでの三日間、全く出なくなり、さすがに苦しくなってきた。そろそろ下剤でも飲んだ方が良いか?というタイミングでの心身調律。
基本的に、便秘の操法は左下腿(膝から下の脚)の太くなるので、それをその場で細くさせる操法(大根脚操法)をかける。だが、このケースでは、連日の徹夜、精神的プレッシャーで腹部が硬い。この体幹部の強張りは、呼吸も浅くさせるし、動悸も早める。ろくなことがないので、優し〜い刺激で緩めておくのが良い。頭(頸椎一番)も緩めておくとなお良い。
果たせるかな、数時間後には快便であったそう。出産は、周囲のこういう苦労の甲斐もあって、素晴らしいものになる。


二例目は、止むを得ず無理な減量(三週間で15kg減)中の格闘家 菊野克紀さん。身体が怠い、動きが鈍い、脚が重いとのことだったので整体していたが、体幹部が異様に硬い。稽古と運動のし過ぎ、明らかなオーバーワーク。しかし、体重とパフォーマンスの維持のためには動かないといけないらしい。このケースでは、多少強めの刺激で体幹部の筋肉を丹念に解していく。一旦解しきってから、必要な筋肉だけに負荷をかけて促通し、満遍なく正常な動きの骨格筋を取り戻す。まぁ例えれば、コタコタに汚れきったラリーカーをバラして分解掃除して組み直しするようなイメージ。
正體後程なくトイレに行き、久々の快便だったと、本人から聞かされる。なるほど、いわば半断食状態で身体を動かし続けた三週間、しかも大事な試合直前での精神的プレッシャー。便秘状態でない方がおかしい。副次的ではあったが、体幹部と脚部の的確な緩めと締めが、そのまま便秘操法にもなっていた。これで、少しであろうが減量にも貢献できそうだし、何より便秘など無い一段上の身体コンディションでいられるだろう。あと少し、できるだけ高いパフォーマンスまで研ぎ上げて欲しいと祈る。

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太陽庵では、便秘の操法は再現性の高い技法である(要望あれば伝授しているし、皆できるようになる)。
しかし、便秘の原因が食べ過ぎなのか、気持ちの落ち込みなのか、不眠なのか、などでその対処は全く変わる。身体だけからのアプローチではなく、身体から心へのルートがあり、その逆ルートもあることをよく知り、そのアプローチ法を研究することで、その効果は数倍にもなる。

ヒトと接している

ということを深く理解すること、そして覚悟することが大事だ。