水面は夏の太陽が照り返して白く輝いていた。
その上をクルーザーは風を切りながら滑るよう
に進んだ。
「気持ちいい。私、初めてなの。海に出るなんて。
ね、見て!あれって何?光ってるの。魚の群れ?」
女はまるで子どものようにはしゃいだ。男は眩し
そうに目を細めた。
太陽が沈んでしまえば甲板は潮の香り漂う
レストランに早変わりする。船室は広くはないが
小さなキッチンと2人が甘い時間を過ごすに
は十分なベッドがしつらえてある。昼間に男が
釣った魚を女が手際よく料理した。
「美味しい!」
目を輝かせながら女がいった。
「だろ?俺が釣ったんだ。」
男は少し自慢げに微笑んだ。
「料理したのは私でしょ?」
女はいたずらっぽく人差し指を突き出して男の
鼻先でくるくると回した。男は女を愛おしく思った。
ビールの泡も消えかけた頃にはすっかり夜の帳
も下りて海は深く濃い緑色に変わっていた。どれく
らいの遠い時間を駆け抜けてきたのだろう?空に
は無数の星が瞬き男と女をただ見守っていた。
男がデッキから船室へと下りていき少し灯を暗く
した。女は少し酒が回っているのか頬をほんのり
と赤く染めていた。そのせいか海から時折吹いて
くる風を楽しんでいるようだった。
「こっちへおいで。」
男が女を優しく呼んだ。