病院から
義母の危篤の連絡があった日
コロナ禍にも関わらず
家族で面会に行くことが許された。
「お義母さん、来ましたよ!」
と耳もとで大きめの声で伝えると
半開きの目に生気が戻り
全く動かなかった腕を
上げて下ろした。
喋れなかったし
目からはすぐに生気が消えてしまったが
義母には
みんながお別れに来たことを
理解できていたと思う。
そこで
あろうことか義兄と夫が
お葬式の話を始めた。
葬儀社をどうするかで
口論が始まったのだ。
あー
もうこんな時にお義母さんの前で
そんな話しないでよ!と思い
その口論が耳に届かないよう
お義母さんに話しかけ続けた。
お義母さんはまだ生きている。
自分は死ぬとわかっていても
そんな話聞きたくないんじゃないかな…
ましてや兄弟喧嘩まで…
耳が遠いから聞こえまい
と侮っていたのかな。
義母は
それから1週間後に亡くなった。
あの日が最後になることは
みんな知っていた。
今でも何度も思い出す。
可愛がって育てた兄弟が
自分のことで口論している場面が
最期に見た景色になるなんて
悲しかっただろうなぁ…
死ぬ前に葬儀屋さんは決めておこう
と思った。