赤ZUKINちゃん7 | ぶーさーのつやつやブログ

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艶が2次小説と薄桜鬼ドラマCD風小説かいてます。


「ここが、私の部屋で正面が土方さん」
「僕はここの部屋」
2人は少女にひとつひとつ誰の部屋か説明して、通路を進んだ。

「で、この階段を上ると客室があるんだ」
翔太が先導して階段を駆け上がった。

3階にあがると、そこにはひとつだけ2階の部屋とは明らかに違うデザインのドアがあった。


ガチャ


沖田がノブを回し、ドアを開ける。
カーテンが閉め切ってあったので、月明かりもなく室内は真っ暗闇だった。
入り口付近の壁に手を這わせて照明のスイッチを入れると、天井に吊るされた小さなシャンデリアに光が灯された。

「わあ・・・素敵・・・」

少女は感嘆の息をもらして、中へ入った。

部屋はとても綺麗に片づけされていた。
趣味の良いカーテンとベッドカバーは揃いの柄で、ふかふかの絨毯は毛足が長く、サイドテーブルやスタンドライト、ソファ、テーブル等はアンティークで統一されていた。
大きな鏡付きのドレッサーの横には高級そうな額縁におさまった肖像画が飾られていた。

「これは、だあれ?」
肖像画に近寄って、沖田を見る。

「これは、元々この屋敷に住んでいたご夫婦です」
少女に優しく微笑んで、沖田は肖像画を見上げる。
「部屋数を見てわかるように、たくさんのお子さんがいたらしいんだけどね、旦那さんが貿易の仕事をしている都合で遠い国へ引っ越す事になったんだ」
翔太が説明を続ける。

そこで、この夫婦は屋敷をほおっておくのはもったいないと借り手を探して、ここに居る8人が集まったという事だった。
裕福な夫妻だったので、8人から賃料を取ることもせず、その代わりにきちんと庭の手入れと屋敷の管理をして欲しいという条件のみで住まわせてもらっている、と。

「この部屋は客間というより、元々ご夫妻の寝室だったのだろうね」
沖田は確認するようにぐるりと部屋を見渡して言った。

「こんな綺麗なお部屋に・・・いいの?」
問いかけに、2人は同時に頷いた。

「ありがとう」
嬉しそうに頬笑んで、ぺこりと頭を下げた。

「なんなら。ずうっと住んでもええんどすけど・・・」
いつの間にか入り口に秋斉が立っていた。

その一言に沖田も翔太も目を見開いて、秋斉と少女の顔を交互に見る。
秋斉の悪い冗談に決まっているけれど、でももし、そうなったら・・・同じ思いで答えを待つ。

「・・・えっ、いいの?・・・」
そのまさかの反応に3人はぎょっとして顔を見合わせた。
考えるように少女が黙り込んだ次の瞬間

「おばあさんの近くに居られるのは嬉しい・・・でも、お母さん一人にできないから・・・」
残念そうに眉を下げて、秋斉を見つめる。
翔太も沖田も当然だよね、と表面に出さない様に落ち込んだ。

「ふふ、そうどすな」
ゆったりと近寄って、目線を少女の高さに合わせた。
余裕の表情を装っている秋斉も、少女の一瞬の沈黙にほんの少しだけ期待を抱いた反面、二人同様残念に思っていた。

「じゃあこれからはたまに遊びに来たらええ」
秋斉が優しい口調でそう言うと、沈んでいた顔をぱあっと明るくさせて「うん」と笑った。



4人が暖炉の部屋へ戻ると土方と俊太郎が戻ってきていて、お風呂の準備ができましたよ、と少女に告げた。
浴室の場所を口頭で教えて、脱衣所にタオルや着替えも置いてあると龍馬が言った。ここに住んでいた娘さんのものだろう、家族達の新品の衣類などは全て倉庫に几帳面にしまったあったのだと付け加えた。
少女はありがとう、と小さく言って浴室へ向かった。





「あの子、ずっと帰らなきゃいいのに」
浴室の扉が閉まるのを確認して慶喜が独りごとのようにつぶやいた。
全員が同じ事を考えていたのか、誰も非難の言葉を発しなかった。
己たちの思いを打ち消すように、少女がお風呂からあがるまでそれぞれが各自の過ごし方で時間を潰した。


沖田は担当である倉庫や食糧庫、裏口など各所の戸締りする。
土方はグラスにブランデーを注いで飲み始める。
翔太は各部屋のごみをまとめたりの雑用をこなす。
慶喜はテーブルやキッチンの後片付けを。
秋斉は読みかけの本を開き続きを読む。
高杉はお気に入りのレコードをかける。
龍馬は壁に掛ったいくつもの猟銃の手入れを。
俊太郎はチェス盤を広げて駒を並べる。



・・・しかし、30分、40分と経っても少女は浴室から出てこない。


「あん子、なんちゃーないかね?」
龍馬がそわそわとしながらぽつりと言うと「女の風呂は長いもんだろ」と土方が一蹴した。
「でも、もう結構長いかもね」
慶喜も心配そうな顔つきになって、まだ火をつけたばかりのタバコを灰皿でもみ消した。
パタンとチェスの本を閉じて、俊太郎が立ちあがろうとした頃には高杉が浴室に向かって走り出していた。


ドンドンドンッ


「おい、だいじょうぶか?・・・おい!」
拳で何度も叩き、ドアに耳をつけて返事を待った。
ぞろぞろと7人も後からやってきて、皆で声をかけるがいっこうに返事はなかった。

「沖田はん、鍵は?」
秋斉が焦った顔で沖田に言うと、弾かれたようにキッチンの壁にあるキーボックスへと向かった。

ガチャッ

しかし、鍵はかかっておらず高杉が掴んだドアノブはすんなり回転した。

「沖田さん!開きました!」
翔太の大声に振り返り、走って皆の方へ戻ってきた。

あまり広くない脱衣所に8人の男が次々に入る。
擦りガラス状のドアの向こうから人が動いている気配は感じられない。

「開けるぞ!」
先頭の高杉が念のため一言断ってから、勢いよくドアを押した。

風呂場から脱衣所に湯気が流れ込み、一瞬視界が真っ白になったがすぐに、浴槽にぐったりともたれかかった少女の顔と白い両腕が見えた。

「おい!!!しっかりしろ、おい!」
着衣が濡れることも気にせず、浴槽に駆け寄って腕を掴んで強く揺さぶる。



(・・・あれ?誰か呼んでる・・・?)



ゆっくりと少女の瞼が持ち上がると一同は安堵の息をついた。

「皆揃って・・・どうしたの?」
あまりにも拍子抜けする少女の言葉に8人ともが凍りついた。

「っ・・・お前がいつまで経っても風呂からあがらないから!」
さっきまで心配で張り詰めていた心の糸がぷつりと切れて、つい怒鳴り声のような口調で言ってしまう。

「ご、ごめんなさい。あまりにも気持ち良くって・・・うとうとしちゃったの・・・」
毛先から、睫毛から、ポタポタと滴が零れ落ちる。

少女は浴槽の中の自分の裸体を隠す事もせず、座った状態でただ許しを請う瞳で8人を見上げる。

「高杉はん・・・」
俊太郎がポンと肩に手をのせると高杉は我に返ったような顔になり、
「大きな声出して、すまなかったな・・・早く出てくるんだぞ」
そう言って視線を逸らし、「行こう」と皆を押して出口へ向かう。

8人が少女に背を向けた時、浴槽から大きな水音がした。

「!!!」

少女が倒れたのかと思い、皆が一斉に振り向くとその場で少女が立ちあがって、ヘリを跨いで浴槽から出るところだった。

真っ白ですらっとしなやかな身体を惜しげもなく晒して、恥じらうどころか、平然と濡れた髪を絞った。
全員が己の目を疑った・・・。


「ぅわああああ!」
「お、お、お、お前・・・」
「あんさんっ!」
途端にそれぞれが大声を出して、風呂場は一瞬でパニックになった。

出口に一番近かった沖田が慌てて脱衣所のバスタオルを掴んで、目をつむって投げつけた。
ふわっと広がった白い大きなバスタオルを空中で奪う様に掴み取ると、慶喜は急いで少女の身体に巻きつけた。


「???」
どうしたの?と言わんばかりの目で不思議そうに首を傾げて皆を見た。



タオルで包んだ少女を脱衣所まで連れて行くと
「いいかい、ここでゆっくり髪を乾かしてから、戻っておいで。ね」
そう言い聞かせて、浴室の扉を後ろ手で閉めて廊下に出た。



バタンッ



慶喜が出てくると、浴室前の廊下では、今起こった信じられない光景のせいでざわめいていた

「な、なんちゅうおなごじゃ・・・」
龍馬は目を白黒させて、茫然としていた。

「ちょっと変わった子・・・とか、そんな次元じゃないですね」
翔太は目を閉じて息を整えた。

「心臓に悪いです・・・」
沖田は左胸あたりを押さえながら笑った。

土方は無言で額に手をあてて、秋斉は扇子を閉じたり開いたりを繰り返す。

「まあ、目の保養にはなったな」
脳天気に高杉は笑いながら部屋の方へと戻って行く。

心配してたくせにと、高杉の背中を見ながら心の中で思うと自然と笑みが漏れた。
ふふ、と声に出して俊太郎もその場を離れる。




≪赤ZUKIN8へ続く・・・≫