果報は寝て待て。

万事を尽くし、生き残る。布石を打ち続け!


家康は、阿茶の健気(けなげ)な優しさに

心の琴線を言葉のシャワーにて温められて居た。



気が付けば


足が優しく触れていた。

手も触れて居る。


お互いに眠って居るのに

微睡(まどろ)みの中、阿茶の指が、

そっと力を込める。


起こさない様に

そっと握り返す。


薄(う)っすらと瞳を開くと

阿茶もまた、瞳を開く。


目が合った。

含羞(はにか)み

右手と右手とに力が入る。


お互いに愛して居た。

體を少し寄せ、おでこだけが、優しく触れた。


山岡荘八 徳川家康