藤吉郎は、夜も眠れない程の

不安に押し潰されそうな心持ちで


夜中に目覚めた。

寧々は、居ない。


不安か?

寧々の微笑みか?


望むは、寧々の微笑み。

そう心に映じ、眠りに再び落ちる。


声が聴こえた。

「一緒に行きましょうね」
寧々の声が、湧き水、心の中へ沁み渡り

余韻を残しながら心の爛(ただ)れを潤して居る。


其の声に全身全霊をすっぽりと納(おさ)め、膝枕の様に

まだ、明けきらぬ暁(あかつき)、眠りに誘って貰いたい。


貰える。そう確信しながら眠りへ落ちる。


不安は、覚醒。
安寧は、眠りや安心。

寧々の微笑みは、儂の抉(えぐ)られた命の灯火(ともしび)に

七転び八起きする胆力を満たす。