○芫花(げんか)
中国、台湾原産のジンチョウゲ科の落葉低木フジモドキ(Daphene genkwa)の花蕾を用いる。サツマフジとも呼ばれ、日本には江戸時代初期に渡来し、庭や公園など植栽され、九州では野生化している。春に淡青紫色の小さな花を咲かせる。
花にはゲカニンやアピゲニン、刺激性の脂状物質が含まれ、利尿作用があり、また毒性がある。芫花は神農本草経の下品に収載され、古くから逐水薬として知られていた。ただし毒性が強いため、数年間貯蔵したものや酢酸で加工した醋芫花がよいといわれている。
漢方では瀉下と利尿作用を兼有する逐水の効能があり、浮腫や腹水、胸水、喘息などに用いる。効能は甘逐・大戟とほぼ同じであるが、逐水作用は甘遂より弱い。とくに上半身の胸水や喘息、咳嗽に適している。
肋膜炎などによる胸水や肝不全の腹水などに甘逐・大戟などと配合する(十棗湯)。浮腫や腹水などがあり、大小便が出ないときには牽牛子・甘遂・大戟などと配合する(舟車丸)。
近年、中国では日本住血吸虫による腹水や急性肝炎にも応用している。また精神病に対しての報告もある。ただし瀉下作用が強く有毒であるため、比較的体力のある場合に短期間のみ使用する。