○艾葉(がいよう)
日本各地に自生キク科の多年草ヨモギ(Aremisia princeps)
またはオオヨモギ(A.montana)の葉を用いる。ただし一般の市場品としては全草も出回っている。ヨモギ属の種類は多く、中国の基原植物にはヨモギと近縁の艾(A.argyi)や野艾(A.vulgaris)が用いられている。沖縄ではフーチバーという名でニシヨモギ(A.indica)が野菜として利用されている。ヨモギはモチグサとも呼ばれ、春先の若芽を草餅や草だんごに用いている。
ヨモギの葉の裏の繊毛はモグサ
の原料であり、ヨモギは「よく燃える木」、モグサは「燃える草」という説もある。モグサを日本では熟艾と書くが、中国では艾絨という。ヨモギの乾燥した葉を細かくつき砕いた後、篩にかけて滓を除き、綿のようになって残った柔毛を晒したものがモグサである。日本産のモグサは主としてオオヨモギからとっており、滋賀県伊吹山
の名産である。
葉の成分にはシネオール、αツヨーン、カフェータンニン、ビタミンA・B・C・Dなどが含まれる。漢方では温裏・止血・止痛の効能があり、腹部の冷痛、下痢、鼻血、吐血、下血、性器出血、帯下、胎動不安、腫れ物、疥癬などに用いる。とくに婦人科領域の止血薬や安胎薬としてよく知られている。
民間では全草を煎じた液を腹痛や貧血、痔の出血に、根を清酒に漬けたヨモギ酒を喘息に、生の葉の汁を切り傷の血止めや湿疹、虫刺されの外用薬に、全草を浴湯料として風呂に入れて冷え性や腰痛、痔の治療薬にとさまざまに用いられている。
近年、ヨモギで作ったローションに止痒作用があるとして透析
患者やアトピー性皮膚炎
などに用いられている。ちなみに欧米では近縁種のオウシュウヨモギ(A.vulgaris)がマグワートと呼ばれ、生理不順や分娩促進などに効果のあるハーブとして用いられている。