○深海鮫エキス
サメは、軟骨魚類からエイ・ギンザメ類を除いたものの総称で、アイザメ、アブラザメ、シュモクザメ、ホシザメ、ネコザメ、ノコギリザメ、ジンベイザメなど大小種々のものが含まれる。肉はカマボコなどの練製品に使われるが、肝臓からは肝油が作られる。特にアイザメの肝臓は良質で、女性の高級美顔料として使われている。この肝油に多く含まれているスクアレンという油性物質が、いわゆる深海鮫エキスと呼ばれ、体の細胞の新陳代謝を活発にし、健康の維持、増進に役立つ有効成分である。
スクアレンはまた、水深1000mという苛酷な環境で生きる深海鮫の活力源でもある。深海は途方もないほどの水圧と酸素不足で、生息する生物が少ない荒涼とした世界である。それほどの厳しい状況にありながら、サメは優れた五感と共に、行動力とバイタリティーを保っている。その謎を解く鍵が巨大な肝臓にあるのではないか、と考えられた結果、見出されたのが肝臓の主成分スクアレンである。深海鮫の肝臓は体重の17~27%に及び、特にアイザメの肝臓の重さが体重の25%を占め、その25%が肝油である。肝油は90%近くがスクアレンである。
スクアレンは、日本の油脂化学のパイオニアであった辻本満丸が1906年(明治39年)に肝油から発見した高純度不飽和炭化水素に自らつけた名称で、この油脂の特徴は無色、無味無臭、低揮発性で、凝固点もマイナス45~50度と低く、性質はよく伸び、皮膚への浸透性が強い。この安定した特性が、化粧品に適しているわけである。また、またスクアレンは化学的に安定するために水を還元して水素を取り込み、その結果、酸素を発生する。これが体内で必要とされる酸素を補給する働きをしているのではないかと考えられている。したがって、栄養素やエネルギー源としてばかりでなく、臓器の機能回復を手助けする整備エンジニアのような役目を果たす。
その大きな作用としては①浸透性、②賦活作用(元に戻ろうとする力が強い、細胞や皮膚の発育を促進させる作用)、③殺菌作用、④浄化作用(水素を取り込むことにより体内の新陳代謝を促す還元作用である)、⑤麻痺作用などがあげられる。こうした作用が、多く疾患に対して効果を上げるのである。