神戸で講座があるときは、いつもちょっと早めに行き、元町の大丸神戸店付近をウロウロしているのである。
最近は、帽子の専門店『CA4LA(カシラ)
』の神戸店に行って、わがままを言うことにしている。
いままで、私の頭が入る帽子なぞ、どこに行ったって存在しなかったのであるが、ここには数こそ少ないが存在するのである。
その日は、ローマに行って帽子を買い損ねた話をし、「一度でいいから、ツバ付きのボルサリーノ
あたりをかぶってみたい!」とダダをこねてみた。
すると、東京の表参道にある『CA4LA』の2階のアトリエというところであれば、「100cmの頭であろうが、帽子をお作りしますよ」というのである。
おお、100cmの頭でも‥‥!
このフレーズが、私のハートに響いたのである。
「行こうじゃないの、表参道!」
最近は、みっちゃんにそそのかされ、表参道の裏にある裏原宿にも進出しているこの私であるからして、表参道などチョロイものなのである。
そして、よろこびいさんで表参道の『CA4LA』の2階に行ったのである。
「ご用件は?」という女性のスタッフ。
うつむいて、「デカいんです‥‥」ともじもじと答える私。
「は?」とけげんそうな女性スタッフ。
「デカすぎて、入らないんです」と顔を赤らめながら言う私。
そして、警察を呼ばれる前に、コトの真相を話した。
「ボルサリーノのようなかっこいい帽子をなんとかかぶりたいんですけど。こちらに来ると作れると聞きましたので」
すると、帽子を作るのは、「安くて3万円ほど、高ければ無限大」というモチベーションの下がるお話‥‥。
しかしながら、素材にもよるのだが、なんと、修理という名目で、徐々に徐々に生地を引っぱって伸ばすことで、5cmぐらいまでなら大きくできるというのである。
そこで、私の頭を正確に測ってみていただいたところ、63.2cmであることが判明。
最近、体とともに頭も痩せたようなのであるが、やはり、デカかったのである。
表参道の『CA4LA』の2階には、ありとあらゆるボルサリーノが積み重なって並んでいるのである。
ここで、「あんな帽子かぶりたい、こんな帽子かぶりたい」などとダダをこねていると、なにやらドデカーい人が1階から上がってきたのである。
そして、「63cmぐらいなら、なんとかなるんやないの?」などと言い、いきなり従業員をアゴで使いはじめたのである。
「これは、よほどの常連さんなのかしら‥‥?」
そう思い、様子を見ていると、「ワシも頭が61cmあって、帽子では苦労してる」などと話しかけてこられた。
そして、なんとなく会話していると、「直接、ボルサリーノ(帽子のメーカー)に電話をかけて、サイズがないか聞いてみてやれ」と従業員をまたアゴで使うのである。
相当な常連さんらしいこのおっさん、この私よりもデカい体格をしているにもかかわらず、私がかぶりたい帽子をちゃんとかぶっているのである。
どうも、61cmなら、かぶれる帽子があるようである。
その後、私は安い帽子を買い、修理費として4000円ほど払うことで、私サイズの帽子を作ってもらうよりは安い買い物をしたのである。
それにしても、あまりにも態度のデカいあのおっさん、いったいだれなのかが気になって、1階に降りてからスタッフに聞いてみた。
そしたら、な、な、なんと、『CA4LA』の社長だったようなのである。
なるほど。
体もデカけりゃ、態度もデカいはずである。
しかしながら、私のために、一生懸命、なんとかしようとしていただいたことに、私はとても感激し、今後、ますます『CA4LA』に通おうと腹を固めたしだいなのである。
どうも、『CA4LA』のかしらは、頭も体も心もデカい人だったのである。