五月の爽やかな日差しの下、根津美術館の静謐な庭園を散策した。目に飛び込んできたのは、時の流れを超えて静かに咲き続けるカキツバタの群れだった。
見頃を少し過ぎていたとしても、その魅力は色褪せることはなかった。
紫色の濃淡が織り成す風景は、古い絵画を彷彿とさせるような趣があった。
庭の一角では、ツツジが鮮やかに花盛りを迎えており、その色とりどりのコントラストが春の光を一層明るく照らしていた。
また、尾形光琳の「燕子花図屏風」にも出逢い、その作品からは日本の伝統的な美しさが感じられ、見る者を虜にした。
先日、知立の八橋で見た燕子花も蘇る。
それぞれの場所で目にする花々は、同じ種類であっても、それぞれ独自の美しさを放っていた。
これらの瞬間は、私にとって非常に幸福な時間であり、自然の美しさとそれを愛でる文化が生み出す日本の心を、新たに感じることができた。