榊原平のブログ―安城·愛知から世界に学ぶ Taira Sakakibara’s Blog : A Global Learner from Anjo and Aichi

榊原平のブログ―安城·愛知から世界に学ぶ Taira Sakakibara’s Blog : A Global Learner from Anjo and Aichi

榊原平と申します。愛知県安城市出身・在住。常に学び、観察し、考え、人や社会に共感し、このブログでは自分が学んだことや考えたことや感じたことを書いています。このブログで安城・愛知から世界へつながり(Solidarity)を作りたいと思っています。

2026年2月1日、日曜日の午後。私は愛知県芸術劇場コンサートホールへと足を運びました。 今日聴いたのは、指揮者・岩村力氏を迎えた新名古屋交響楽団の第20回定期演奏会です。

 

 

プログラムは「2つの第10番」という、非常に峻厳かつ思索的なものでした。

■ マーラー:交響曲第10番より「アダージョ」

前半は、グスタフ・マーラーが死の直前に書

二つの「第10番」が描く生と死、そして愛 ――新名古屋交響楽団 第20回定期演奏会

2026年2月1日、日曜日の午後。私は愛知県芸術劇場コンサートホールへと足を運びました。

今日聴いたのは、指揮者・岩村力氏を迎えた新名古屋交響楽団の第20回定期演奏会です。

プログラムは「2つの第10番」という、非常に峻厳かつ思索的なものでした。

■ マーラー:交響曲第10番より「アダージョ」

前半は、グスタフ・マーラーが死の直前に書き残した最後の交響曲から、唯一完成された第1楽章です。

  • ● 極限の不協和音  妻アルマへの絶望的な執着と、迫りくる死への恐怖が混ざり合う、あの凄まじい不協和音。
  • ● 凍りつく緊張感  ホール全体が静まり返り、背筋が凍るような緊張感に包まれました。
  • ● 魂の彷徨  ヴィオラの独奏から始まる旋律は、まるで救いを求めて彷徨う魂の叫びのようでした。

■ ショスタコーヴィチ:交響曲第10番

後半は、独裁者スターリンの死後に発表された、ドミトリ・ショスタコーヴィチの傑作です。

  • ● 重厚なエネルギー  マーラーの静寂とは対照的に、圧倒的な音の壁が押し寄せます。
  • ● DSCHの咆哮  作曲者自身のイニシャルを音型化した「D-Es-C-H」が力強く響き渡るフィナーレは、圧政からの解放を告げる咆哮のようでした。
  • ● 生きる意志: 暴力的なリズムを突き抜けて奏でられる旋律には、言葉を失うほどの生へのエネルギーを感じました。

岩村力指揮の新名古屋交響楽団定期演奏会

■ アンコール:マーラー 交響曲第5番より「アダージェット」

そして、興奮冷めやらぬ中で届けられたのは、同じマーラーの「愛の歌」でした。

「死を見つめた10番の後に聴くこの曲は、より一層優しく、傷ついた魂に深く染み渡るようでした。」

10番で描かれた死や苦悩の先に、この至福のアダージェットが置かれたことで、プログラム全体が一つの壮大な救済の物語として完結したように感じます。

オーケストラ演奏会、マーラーとショスタコーヴィチの第10番

こうした極限の感情や危機の時代を反映した音楽に触れることは、人間理解を深める大切な時間となります。

記念すべき第20回の節目にふさわしい、濃密で素晴らしい音楽体験をありがとうございました。

新名古屋交響楽団 第20回定期演奏会チケット

終わりに

こうした極限の感情や危機の時代を反映した音楽に触れることは、人間理解を深める大切な時間となります。

記念すべき第20回の節目にふさわしい、濃密で素晴らしい音楽体験をありがとうございました。

 

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はじめに フランスが動いた「2027年の決断」

最近、世界のIT・安全保障関係者の間で大きな衝撃を与えたニュースがあります。

フランス政府が、セキュリティ上の懸念からMicrosoft TeamsやZoomといった米国製プラットフォームの利用を段階的に廃止し、2027年までに全省庁で国産の「主権プラットフォーム」へ移行すると発表したのです。

 

 

この動きは、単なる「地産地消」の話ではありません。

国家の情報を他国のプラットフォームに預けることが、いかに深刻なリスクを孕んでいるかをフランスが世界に示した、事実上の「デジタル独立宣言」なのです。

日本の死角 なぜ「中国」は警戒し、「米国」は盲信されるのか

現在、日本のデジタル安全保障の議論を眺めると、一つの奇妙な歪みに気づきます。

私たちは「LINEのデータが中国から閲覧できる状態だった」「TikTokを通じて情報が中国政府に流れる」といったニュースには敏感に反応し、強い警戒心を持ちます。もちろん、それは正当なリスク管理です。

しかし、その一方で、官公庁や大企業の機密会議が日々行われているMicrosoft Teams、Zoom、Google Meetといった米国製プラットフォームの安全性については、驚くほど無批判ではないでしょうか。

「Cloud Act」という見えないリスク

ここで知っておかなければならないのが、米国の「Cloud Act(クラウド法)」です。

この法律は、たとえサーバーが日本国内にあったとしても、そのデータを管理しているのが米国企業であれば、米国政府が捜査などの目的でデータの開示を強制できる仕組みを整えています。

つまり、私たちが「日本国内のデータセンターにあるから安全だ」と思い込んでいる情報は、法的・物理的には米国の管理下に置かれているのと同義なのです。

中国への漏洩を恐れる一方で、米国の公権力が日本の機密情報にアクセスできる可能性には目をつぶる――。

この「ダブルスタンダード」こそが、今の日本のデジタル戦略における最大の死角です。

技術的解法としての「LiveKit」 なぜフランスはこれを選んだのか

フランス政府が構築を進める新プラットフォーム「Visio」の心臓部には、LiveKitというオープンソース(OSS)技術が採用されています。

LiveKitとは、一言で言えば「自前でビデオ会議サーバーを構築するためのエンジン」です。

  1. 透明性(ホワイトボックス化) OSSであるため、ソースコードが完全に公開されています。裏でどこかにデータを送信するような「バックドア」が仕込まれていないかを自分たちで検証できます。

  2. 完全な自律性: 特定の企業のクラウド上で動かす必要はありません。フランス国内の、フランスの法律が適用されるデータセンターで運用できます。

  3. ベンダーロックインからの脱却  「明日からライセンス料を2倍にします」と言われても、自分たちでソースコードを保持しているため、他国の企業の言いなりになる必要がありません。

フランスは、既存の「便利なアプリ」を買うのではなく、LiveKitという「自律できる技術」を使い、国家の盾を自分たちで鋳造することを選んだのです。

問いたい「デジタル小作人」の現状

かつて、土地を他国に占領されることは敗北を意味しました。現代において、その「土地」は「デジタル・インフラ」に置き換わっています。

日本の通信、メール、会議、文書作成のすべてを米国製ツールに依存している現状は、いわば**「デジタル小作人」**のような状態です。どれほど働いても、ライセンス料という名の「年貢」を永続的に他国へ支払い続け、いざという時のルール(利用規約や開示権)は地主(米国企業・政府)が握っています。

これが果たして「主権国家」の姿と言えるでしょうか?

結論 日本に必要なのは「疑う力」と「育てる意志」

フランスの例を見習い、日本も今すぐすべての米国製ツールを捨てるべきだ、と言うのは現実的ではありません。

しかし、少なくとも以下の2点は始めるべきです。

  • 「利便性」と「機密性」を分ける  日常の雑談は既存ツールでも良いが、国家機密や高度な知的財産に関わる会議は、LiveKitのような技術を用いた「主権プラットフォーム」で行う。

  • デジタル自給率の向上: 国内のテック企業がLiveKitのようなOSSを活用し、日本独自の安全なインフラを構築できるよう、政府がアンカー・クライアント(最初の大口顧客)として支援する。

「どこの国の法律で、自分たちのデータが守られているか(あるいは暴かれているか)」。リスクコミュニケーターとして、私たちはこの問いを常に持ち続けなければなりません。

フランスの決断は、私たち日本人に「本当の主権とは何か」を突きつけているのです。

【ベネズエラ情勢と人道危機の真実✨イシカワ大使のお話
⚠️ 直面している峻烈な事実

1月3日、ベネズエラは国際社会の根幹を揺るがす深刻な事態に直面しました。大国による政治・経済攻撃が激化する中、これまでに100名を超える尊い市民の命が奪われるという、極めて悲しい人道危機が起きています。

1. 講義の背景と目的 🌏

現在、ニコラス・マドゥーロ・モロス大統領率いるベネズエラは、米国からの激しい圧力にさらされています。大統領夫妻の拉致未遂や軍事介入の脅威など、私たちが普段ニュースで目にしない「真実」についてのお話でした。

2. 石油と主権の100年闘争 🛢️

・1914年 石油発見と列強による支配の開始
・1960年 OPEC設立と権利の主張
・1980年代 新自由主義の蔓延
・1999年 チャベス政権による資源の奪還(石油主権の回復)が現在の対立の根本にあります。

3. 「世界の上書き」という暴力 ⚡

トランプ政権による攻撃は、既存の国際法や主権を大国の意志で強引に書き換える「世界の上書き」です。トランプ大統領の「華麗な作戦」「我々がこの国を運営する」という言葉は、主権への完全な無視を象徴しています。

4. 奪われた100余名の命 🕊️

この暴力的なプロセスの陰で、100名を超える一般市民が命を奪われました。

ロドリゲスさん(60代)
ローサー・ゴンサレスさん(80代)

※「世界の上書き」という暴力の犠牲となった方々の無念を忘れてはなりません。.

5. ロドリゲス暫定大統領の演説と基本姿勢 📣

🛠️ 労働者の保護とインフラ整備
米国から還流させた石油代金3億ドルを、マドゥーロ大統領の指示により、市民の給与補助や電気・水といった生活に不可欠なインフラ整備に充てています。

 

 

🛞 「車輪」の比喩
「問題は(車輪が)どちらへ進むのか、ということだ」と述べ、他国に従属するのではなく、自らの力で独立と尊厳の方向へ進むという強い自立の意志を示されました。

🌐 多角的外交
米国を含む全ての国と、対等な立場で関係を築いていくという、開かれた外交姿勢を堅持しています。

6. 平和への盾「平和10原則」 🛡️

国連は弱者のための「盾」であり、国際法を唯一の武器に権利を主張できる舞台です。1955年のインドネシア・ジャワ島の高原都市での「バンドン会議」で示された「平和10原則こそが、防波堤となります。

  • 1. 基本的人権の尊重
  • 2. 全ての国家の主権と領土保全の尊重
  • 3. 全ての民族の平等の承認
  • 4. 他国の内部事務への不介入・不干渉
  • 5. 各国の自衛権の尊重
  • 6. 集団的防衛の不利用
  • 7. 侵略行為の否定
  • 8. 国際紛争の平和的解決
  • 9. 相互利益と協力の促進
  • 10. 正義と国際義務の尊重

7. グローバルサウスと平和の可能性 🌍

⚖️ 規範的多数派(Normative Majority)
国際法を支持する国々が圧倒的多数を占めることで、大国の暴走を止める力となります。

🤝 集団としての承認(Collective Recognition)
国家の正当性を国際社会が「集団」として認め、守り抜く仕組みの重要性が語られました。

📣 具体的連帯の動き
ブラジル、チリ、コロンビア、メキシコ、ウルグアイ、そしてスペインが結束。「平和地帯」の再確認と不介入の原則を、政治的相違を超えて主張しています。

8. 砂漠の中の「井戸」を見つける力 🌟

大使はサン=テグジュペリの『星の王子さま』を引用されました。

星の王子さま、市民の眼差し、真実を探す力

「砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているからだよ」

星の王子さまの表紙、主人公と星々

力による「上書き」が吹き荒れる世界は厳しい「砂漠」のようですが、大使は「世界は死んでいない」と断言します。ベネズエラの中には、人々の尊厳、草の根の民主主義(コムーナ)という「井戸」が隠されています。

この井戸は、表面的な報道を超えて本質を見ようとする「市民の眼差し」を持つ者にしか見つけることができません。大使は私たちに「真実を探す力」を持つよう呼びかけました。

平和は「祈り」ではなく
明確な論理と構造によって
「設計(Design)」されるべきもの

「今日ここに集まった皆さんが、
その『掘り手』であると信じています」ベネズエラ大使による「トランプ政権のベネズエラ攻撃」講演

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Cantiamo! con Marie Vol.2 —— 冬の調べ

1月17日(土)、世田谷・成城の静謐なサロンにて。

響き渡るグランドピアノの傍らで、ソプラノ歌手・辰巳真理恵さんと共に、冬の調べをなぞる午後のひとときを過ごしました。

呼吸を整え、レガートの旋律で心に積もる雪を溶かしていく。音楽の余韻をワイン「今様」の薄紅色がさらに深く染め上げ、日常が聖域へと変わる魔法のような時間でした。


【第一部】冬の情景を声で描くワークショップ

第一部では、辰巳真理恵さんの直接指導のもと、日本の冬を彩る名曲を練習しました。

  • ❄️ 『冬景色』
  • ❄️ 『雪の降る街を』
  • ❄️ 『雪』

呼吸の整え方やレガートの意識、そして歌詞に込められた繊細な情景をどのように声で表現するか。一音一音に命を吹き込むプロセスを、深く学ぶことができました。


琥珀色の時間:和洋の調和と「今様」の雫

ワークショップのあとには、至福のティータイムが待っていました。

和洋菓子とロゼワイン「今様」

今年の干支「午(うま)」をあしらった美しい羊羹や、濃厚なチーズケーキなど、和と洋が調和した一皿。

ここに合わせられたのが、邸宅の主、俳優・辰巳拓郎氏プロデュースのロゼ・スパークリングワイン「今様(いまよう)」です。

ワインとの相性まで考え抜かれたお菓子の取り合わせに、主宰者の細やかな心遣いが感じられました。窓からの陽光に透けるワインの薔薇色と、お皿の上の彩りが、豊かな音楽の余韻をさらに深く染め上げてくれました。


【ミニコンサート】光り輝く歌声の対話

第二部のミニコンサートでは、ソプラノの辰巳真理恵さんと小澤花音さん、そしてピアニストの吉田彩さんによる共演を堪能しました。

ウィーンへの愛や、生きる喜びを歌い上げる華やかなプログラム。お二人の透明感あふれる歌声が響き合う様子は、まさに光の対話のようでした。

🎶 演奏プログラム

  • ウィーンわが夢の街(R.ズィーチンスキー)
    ウィーンへの憧れと美しさを讃える優雅な幕開け。
  • 饗宴(G.ロッシーニ)
    ナポリのタランテラ舞曲に乗せた、情熱的で躍動感あふれる一曲。
  • 生い立ちの歌 I(薮田翔一/詩:中原中也)
    中原中也の詩の世界を、繊細かつ劇的な現代音楽で表現。
  • ヴィリアの歌(『メリー・ウィドウ』より)
    森の精霊ヴィリアへの恋心を歌う、神秘的で美しいアリア。
  • 公爵様、あなたのようなお方は(『こうもり』より)
    小間使いアデーレの茶目っ気たっぷりの「笑いの歌」。
  • シャンパンの歌(『こうもり』より)
    人生と美酒を祝う乾杯の歌。

アンコールでは、能登への祈りを込めた『ノトのツバサ』が披露され、最後は会場の全員で『冬景色』を合唱して幕を閉じました。

音楽と美酒、そして温かな交流に満ちた、心に深く刻まれる一日となりました。

#CantiamoConMarie #辰巳真理恵 #冬の調べ #世田谷 #榊原平

音楽の余韻が漂う琥珀色のサロンにて、グランドピアノの傍らで並び立つ辰巳真理恵氏と榊原平。温かな照明の下、ワークショップを終えた二人の充実した表情が、静謐な空間に溶け込んでいる。

 

スティグリッツ講演録 自由への道 — 経済学と良き社会

(The Road to Freedom: Economics and the Good Society)

【講演概要】

講演者
ジョセフ・E・スティグリッツ(コロンビア大学教授、ノーベル経済学賞受賞者)
シリーズ
日・ASEAN BRIDGES イベント・シリーズ(日・ASEAN友好協力50周年記念)
日時
2026年1月15日(木) 14:00〜
会場
国連大学(UNU)本部 ウ・タント国際会議場(東京都渋谷区)
テーマ
個人、民主主義、そして集団的ウェルビーイングを真に推進する社会のあり方。ネオリベラリズムを超え、「進歩的資本主義」がいかに自由と協調への道を示すかを探る。

スティグリッツ教授が講演「自由への道」で批判の対象としている「リバタリアニズム」について、その基本概念から、現代の「自由の衝突」の偏在性、そして教授が描く「自由な社会の未来像」までを網羅的に整理する。

 

1. 基本的な定義

リバタリアニズム(Libertarianism)は、「他者の自由を侵害しない限り、個人の自由を最大化すべきである」という思想である。

  • 自己所有権  自分の体や能力、得た財産は自分だけのものであるという考え。
  • 最小国家論 国家の役割は警察や国防など、最小限に限定すべきである(夜警国家)。
  • 市場への信頼  経済的な自由こそが最も重要であり、市場に任せればすべてが最適化されると考える。

2. リバタリアニズムを象徴する二大思想家フリードマンとハイエク

教授は、現代のリバタリアニズムを支える二人の巨人、ミルトン・フリードマンとF.A.ハイエクを対比させている。

ミルトン・フリードマン 『選択の自由』

教授の批判: 貧困層には「選択するお金」がない。フリードマンの自由は実質的に「金持ちが他者を支配する自由」にすり替わっていると指摘する。

F.A.ハイエク 『隷属への道』

教授の批判: 実際には、規制緩和を進めた国々で格差という「新たな隷属」が生まれたと論じている。

3. 自由のパラドックス ルールによる自由の創出

教授は、適切なルールや「強制」が、結果として社会全体の自由を拡大させることを強調している。

  • 「信号」の比喩: 信号は「一時的な停止」という強制であるが、これがあることで全員が「安全に移動する大きな自由」を享受できる。
  • 「ごみのポイ捨て」の例: 個人の「捨てる自由」を制限(わずかな強制)することで、全員の「清潔な環境を享受する自由」が守られる。

4. 行動経済学の出現 操作される「自由」

  • 「合理的経済人」の否定: 人間には認知の偏り(バイアス)があり、常に最善の選択をするわけではない。
  • ナッジと操作: 企業は人間の心理的弱点を突き、不当な契約や依存へと誘導する。教授はこれを「操作された自由」であり、実質的な自由の侵害であると批判している。

5. メディアの支配と民主主義の危機

情報のインフラを誰が支配しているかを民主的に議論することの重要性を説いている。

  • 個人による支配への警告 ザッカーバーグ(Meta)やイーロン・マスク(X)といった特定の個人がメディアをコントロールすることで、人々の行動や思考までもが左右されてしまう現状を危惧している。
  • 民主的なコントロール  メディアのあり方を市場や数人の富豪に任せるのではなく、市民が「公正なルール」を民主的に決める必要がある。

6. イノベーションの源泉 市場メカニズムと大学(公共財)

  • 大学から生まれたイノベーション  アメリカの繁栄の根幹は、市場メカニズムだけでなく、大学という公共的な研究機関での基礎研究から生まれてきた。
  • 中国の台頭  中国はイノベーションに傾注しており、アメリカが公共投資を軽視し続ければ、将来的にこの競争に敗北する危険性があると警告している。

7. ネオリベラリズムとしての「現在の資本主義」

教授は、過去40年間の経済システム、つまり「現在の資本主義の正体はネオリベラリズム(新自由主義)である」と明言している。

  • 失敗した実験: 規制緩和や富裕層減税は、格差を広げ、社会を脆弱にした「失敗した実験」である。
  • 搾取の構造化: 独占や情報の非対称性を利用した「価値の収奪(レント・シーキング)」が定着してしまった。

8. 政治的危機 ファシズムへの道

教授は、ネオリベラリズムによる経済的失敗が、民主主義を崩壊させ、ファシズムへの道を開いてしまったと警告している。

ハイエクの誤算: ハイエクは「政府の介入」が隷属(ファシズム)を招くと説いたが、実際にはネオリベラルな「市場放任」による絶望こそが、人々を強権的な指導者の支持へと走らせたのである。

9. 不平等は「選択」の結果 回避可能性と国際協力

  • 不平等の回避可能性 不平等は経済の必然ではなく、私たちが採用している「ルールの書き方」の結果であり、回避可能である。
  • 不平等に関する国際パネル(IPCCモデル)  南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領が提唱した、科学的データに基づき不平等を分析・是正する国際機関の創設に希望を見出している。

10. 自由の真の定義 FDRの「4つの自由」と選択肢の幅

教授は、自由を「他者から邪魔されない権利」という形式的なものではなく、「実質的な選択肢の幅(機会集合)」として定義し、フランクリン・D・ルーズベルト(FDR)が提唱した「4つの自由」を現代的な文脈で再評価しています。

FDRの「4つの自由」

  1. 言論・表現の自由: 自分の考えを自由に発信できること。

  2. 信仰の自由: 信じたいものを自由に信じられること。

  3. 欠乏からの自由: 貧困や飢えに苦しむことなく、経済的な安定が保障されていること。

  4. 恐怖からの自由: 暴力、不当な支配、あるいは情報の操作による不安から解放されていること。

教授は、特に「欠乏」と「恐怖」からの自由がなければ、人は真に自由な選択を行うことができないと説きます。

11. 法の支配の崩壊と「オオカミの自由」

ルールの無視は自由の破壊: 米国政府がすべてのルールを無視するような状況は、社会全体の予測可能性を破壊し、人々の自由を根底から奪う。権力者がルールを無視する自由は、民主主義を支える社会契約の破棄である。

12. 自由を守るためのリベラルアーツ(教養)教育

質疑応答において、教授はAI時代における教育のあり方としてリベラルアーツの重要性を強調した。

  • 語源としての自由  リベラルアーツ(Liberal Arts)は、古代において自由市民が自立し、政治に参加するために身につけるべき「人を自由にする技術(Artes Liberales)」であった。
  • 批判的思考の武器  AIやSNSによる情報の操作に立ち向かうには、情報を鵜呑みにせず、その背後にある意図を見抜く力が必要である。リベラルアーツは、市民が自らの選択肢を正しく認識するための知的な武器となる。

13. 結論 連帯と緊急性

  • 危機の同時進行  「不平等」「気候変動」「AI」という3大危機に立ち向かう人々が、今まさに緊急性を持って一致団結し始めている。
  • 無関心層の目覚め  これまで何もしなかった人々がシステムの限界に気づき、声を上げ始めたこと。この連帯と民主的なルールの再構築こそが、真の「自由への道」である。