私は近ごろ、momoという女のことを、笑いものにしていました。

皆様もその事はご存知ではありましょう。


自分ひとりで笑っていたのではありません。頂いたコメントや評判を見て、私はどこかで安心していました。

自分だけではない。そう思えたことが、その時の私には少し楽だったのです。

 頂いたコメントには、

「ぺちゃぱい、顔が違う」
「ユミコはモデルみたいなスタイル」

などとありました。爆のほうを見ても、

「momoはまな板ガリ宇宙人」
「ユミコは良い」

 などと書かれていました。


普通なら、ユミコへ行くのだと思います。つくばへ行き、評判のよいほうを選び、なるべく損をしないようにする。たぶん、それが普通なのでしょう。


しかし私は、そういう類のものとは逆のほうへ、あえて行ってしまう傾向のある人間なのです。損をするとわかっていても、妙なほうへ足が向く。人から見れば馬鹿げているのでしょうが、それが私なのです。


momoを笑っておきながら、本人を見もしないで避ける。そう考えると、胸のあたりが落ち着きませんでした。正義感ではありません。優しさでもありません。ただ、自分がしたことを、自分だけがなかったことにして逃げるようで、それがいやだったのです。

そう罪の意識です。


私はつくばではなく、龍ケ崎へ車を走らせました。


扉を開けると、宇宙人がいました。


名前を聞くと、momoだと言います。

ああ、これがそうなのか、あの宇宙人なのかと思いました。


けれど、目の前にいる女は、ガリというより、細い。スレンダーと言えば、それで済むようにも見えました。

人は、会っていない相手のことなら、いくらでも悪く言えるのだと思いました。そして私は、その悪口の側にいたのです。


普段の私なら、その扉をそっと閉じていたと思います。しかし、この日は閉じられませんでした。こちらには、負い目、罪の意識がありました。私は中へ入りました。


部屋に入ると、コースの説明を受けました。ここでも普通なら、タイマッサージを選んでいたと思います。もっともらしい理由をつけて、自分に都合のよいほうへ逃げることは、私にはよくあることでした。


けれど、この日ばかりは、罪の意識のため、それができませんでした。

私は、まるで自首でもするような気持ちで、十二,〇〇〇円のコースを選びました。


汚いシャワールームで体を流しました。こういう場所のシャワールームにいると、自分がずいぶん情けないところまで来てしまったような気になります。けれど、そこへ自分の足で来たのですから、誰のせいにもできませんでした。


マッサージ部屋へ戻ると、女はテンションが高く、ローロー、ローローとうるさく言っていました。しかも最初から、しきりに香水をつけていて、部屋にはその匂いが濃く漂っていました。


私は、これはずいぶん騒がしい宇宙人だな、と思いました。


うつ伏せになるように言われました。どうせ適当なマッサージだろうと思っていました。

ところが、この女は意外ときちんと揉むのです。私の好みからすれば圧は足りません。けれど、手を抜いている感じはありませんでした。上手い、とまでは言いません。けれど、普通に良いのです。


 しかも長いのです。


こちらの目的は別にあるのに、丁寧に揉まれると、妙に困ります。雑に扱われれば、こちらも雑な客でいられます。けれど、きちんとされると、自分のいやらしさだけが、少し浮き上がるような気がしました。


頃合いを見て、私は仰向けになりました。


女は、「私、おっぱい小さい」と言いながら服を脱ぎました。


その言い方が、少し先回りしているように聞こえました。きっと、これまで何度も言われてきたのでしょう。言われる前に自分で言っておけば、少しは痛くない。そういう小さな守り方を、私は笑えませんでした。私もまた、言う側にいたのです。

裸になった女を見て、私は思いました。


なるほど、これは確かに立派なまな板である、と。


おっぱい好きの先人たちは、たいそう落胆したことでしょう。怒り、嘆き、爆に書き込んだ者もいたかもしれません。けれど、その時の私は少し違っていました。近ごろのぽっちゃり傾向に気持ちが乗らなくなっていた私は、むしろこの細さを求めていたのです。


 世の中の欠点は、時に、
別の人間にとって都合になる。


女は、あることが得意だと豪語しました。試してみると、悪くありませんでした。妙に得意げな顔をしているのも、少しおかしく、また少し哀れにも見えました。

最中も、ローロー、恥ずかしい、ローロー、と騒がしい。私は心の中で、そんなにローロー言うのなら、あれを着けずに致してくれないか、と罰当たりなことを思いながら、しばらくして尽き果てました。


また、あの汚いシャワールームで体を流しました。けれど、最初から部屋に満ちていた香水の匂いは、いつのまにか私の体にも服にも移っていました。


このまま家に帰れば、大変なことになります。


しかし、そういうところだけ、私は抜かりがありませんでした。ジムに寄り、シャワーだけ浴び、何食わぬ顔で家へ帰りました。罪を犯す時にはだらしなく、隠す時だけ用心深い。そんな自分が、ひどくみっともなく思えました。


これで、momoへの謝罪と賠償、
もとい禊は済んだことにしました。


人間というものは、
自分に都合のよいところで、
勝手に救われたことにするものです。


そして私は、まるで反省のない人間のように、こう思うのでした。


今度こそユミコという子のところへ行こう、と。