カーボローディングとは、カーボ(糖質)をローディング(貯蔵)することで、レース前に体に糖質を貯めこむために行われていますが、マラソン大会直前にカーボローディングは行ったほうが良いのか検討します。
走るために使うエネルギーは、非常に簡易な方法で求めることができます。
【マラソンを走るためのエネルギー】
体重(kg)×距離(km)≒消費エネルギー
(例)60㎏×42.195㎞≒2500kcal
フルマラソンを走りきるためには、体に蓄えられた糖質だけでは足りません。
カーボローディングには、古典的方法と簡易的方法(テーパーリング法、改良法)があります。
【古典的方法と簡易的方法の内容を簡潔に記載】
●古典的方法
レースの1週間前に激しい運動であえて筋肉のグリコーゲンを枯渇させます。
その次の3日間は糖質を減らした低糖質食に切り替えて徹底的にグリコーゲンを減らし、 次の3日間は高糖質食に切り替えます。
それまで枯渇状態だったために、体はより多くの糖質をため込もうとします。
※体に取り込まれた糖質は、「グリコーゲン」という多糖体の形で貯蔵されます
しかし、この方法は欠点も多く指摘されています。
【欠点】
・レース前なのにグリコーゲンが枯渇するほどの激しい練習が必要になる(疲労が抜けないリスクあり)
・低糖質食にすると元気がなくなり練習への意欲が低下する
・慣れない低糖質食や高糖質食に切り替えることで、下痢や風邪などの体調不良を誘発するケースあり
そのため、近年は、簡易的方法が選ばれています。
●簡易的方法(テーパーリング法、改良法)
レース6日前から運動強度を徐々に落としていきます。
同時に、前半の3日間で摂取カロリーの50~55%を糖質から摂り、後半の3日間では60~70%のカロリーを糖質から摂取します。
簡易的方法でも古典的方法と同等のグリコーゲンが蓄積されることがわかっています。
【古典的方法と簡易的方法による筋グリコーゲン貯蔵状況】
マラソンを走りきるために必要なエネルギーを少しでもため込んでおくことは有効であると感じますが、カーボローディングを行う必要はないとの考えもあります。
岩本能史さん『型破りマラソン攻略法』より・・・
日本人ランナーがあえて行う必要はないと思います。
なぜならば日本人の大半は摂取カロリーの50~60%を糖質から摂っているからです。
レース前には誰だって練習量を減らすテーパリングを行いますから、 「カーボローディングするぞ」と意気込まなくても、グリコーゲンは知らぬ間にローディングされているのです。
普通の食事をしていれば、肝臓と筋肉のグリコーゲンのタンクは満タンになっています。
そこへ余計な糖質が入ってくると脂肪細胞に中性脂肪として蓄えるしかなくなるのです。
【考察】
確かに、体に取り込まれた糖質が、グリコーゲンという多糖体の形で貯蔵できるのは、「肝臓」と「筋肉」のみ。
体内に貯蔵できる糖質は約330g(肝臓100g 下半身筋肉230g)です。
糖質1gは4kcalなので、貯蔵できる糖質はMAX1320kcalという計算になるのでしょうか。
貯蔵上限を超えた分は脂肪として蓄えられるので、その場合、高糖質食はデメリットになるということですね。
カーボローディングをやらなくてよい理由も納得できる面があります。
最後は、この男の意見を参考にしましょう。
現・マラソン日本記録保持者 大迫傑さん(日本記録:2時間5分29秒)
大迫傑に学ぶQ&A
P188
前日はいつもより炭水化物を多めに取りますが、そんなに神経質に気にしていないですね。
【結論】
糖質を通常より多く摂るという気持ちでよいが、日本人の食生活を考えると、無理に糖質の割合を多くする必要はない。